2019 Fiscal Year Research-status Report
イネの標的形質のみを改変できるシス配列探索法の開発
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19K22306
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
犬飼 義明 名古屋大学, 農学国際教育研究センター, 教授 (20377790)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 遺伝子発現 / シス配列 / イネ |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの遺伝子が複数の器官で共通に発現するため、遺伝子領域中のDNA変異の利用では対象とする器官のみに特化した品種改良が困難である。本研究では、狙った器官の発現パターンのみの改変を可能にする新たなシス配列探索法の開発・検証を試みる。 本年度は、既にゲノムワイドにDNA 型が決定されているイネの組換え型自殖系統群を用い、RNA-Seq解析等を通して各遺伝子座の発現量に影響を及ぼすゲノム領域(eQTL)の検出を試みた。 イネ品種TC65、DV85、および両品種を親とするRILs(組換え自殖系統群)を供試材料として用いた。これらを水耕栽培し、各幼植物から根系と葉の両器官をそれぞれ採取してRNAを抽出した。これらのRNAをBrAD-seq法 (Breath Adapter Directional sequencing) (Townsley et al., 2015) によりライブラリーを作成した。その後、各塩基配列を次世代シーケンサーにより解読し、それらのリードをイネゲノムへマッピングした。 次に、各遺伝子座領域にマッピングされたリード数を発現量とみなし、イネの有する約3万の遺伝子座毎の発現量を各親品種、およびRIL系統毎に決定した。後者に関しては、それぞれの遺伝子座の発現量に影響を及ぼすゲノム領域eQTL(expression Quantitative Trait Locus)の検出を試みた。これにより、各遺伝子座の発現量を制御するeQTLが当該遺伝子座近傍のゲノム領域に検出されるケースを網羅的に探索した。これらを個々の遺伝子座のシス配列の違いにより見いだされたeQTL(シス-eQTL)候補とみなした。最終的に、これらシス-eQTL候補を対象として、根系では親品種間で発現量が異なるが葉では同程度である遺伝子座を探索した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は根系のみでなく、地上部器官から採取したRNAを用いてeQTLの検出を試みる予定であったが、サンプルの調製が予想以上に困難であり、そこまでには至らなかった。しかし、予備的な試験を繰り返した結果、年度末までに調整の目処がたっており、次年度早々の次世代シーケンサーを用いた解析へとスムーズに以降することが可能な状況にある。そのため、「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 昨年度の根系と同様に、地上部器官から採取したRNAを用いてeQTLの検出を試みる。 2. 一方、親品種に関しては、上記により明らかとなったシス-eQTLのうちその存在の確からしさが顕著であったものを対象として、根系では発現量が異なるが葉身では発現量が変わらない遺伝子座を探索する。 3. これにより見いだされた遺伝子座に関して、公開データベース(PPDB3.0等)を用いて既知のシス配列の検出を行う。両品種間において当該遺伝子座に異なるシス配列が存在した場合には、これが器官間の発現性の違いを支配する候補シス配列であるとみなし、1)ゲノム編集技術で あるCRISPR/Cas9による本シス配列への変異挿入、および2)本シス配列に変異を挿入した人工プロモーターとGUSレポーター遺伝子を利用した発現解析により、器官間における異なる発現制御への本候補シス配列の関与を検証する。 4. さらにこの関与が認められれば、Yeast One-Hybrid法により当該シスを標的配列とする転写因子の同定をも視野にして解析を進めることで 、本研究で取り組む新たなシス配列探索法が優れた手法であるのか否かについて最終的に判断する。
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Causes of Carryover |
本年度は根系のみでなく、地上部器官から採取したRNAを用いてeQTLの検出を試みる予定であったが、サンプルの調製が予想以上に困難であり、そこまでには至らなかった。しかし、予備的な試験を繰り返した結果、年度末までに調整の目処がたっており、次年度早々の次世代シーケンサーを用いた解析へとスムーズに以降することが可能な状況にある。そのため、本次年度使用額分は、次年度にこの解析を進めるために使用するよう計画を立て直した。
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