2021 Fiscal Year Research-status Report
イネの標的形質のみを改変できるシス配列探索法の開発
Project/Area Number |
19K22306
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
犬飼 義明 名古屋大学, 農学国際教育研究センター, 教授 (20377790)
|
Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2023-03-31
|
Keywords | イネ / 遺伝子発現 / シス配列 |
Outline of Annual Research Achievements |
イネ品種TC65、DV85、および両品種を親とするRILs(組換え自殖系統群)を供試材料として用いた。これらを水耕栽培し、各幼植物から根系と葉の両器官をそれぞれ採取してRNAを抽出した。これらのRNAをBrAD-seq法によりライブラリーを作成した。その後、各塩基配列を次世代シーケンサーにより解読し、それらのリードをイネゲノムへマッピングした。 その結果、葉では発現しないが、根では両品種間で有意に差がある遺伝子群を選抜した。次に、これら遺伝子群の発現量を制御する染色体領域をexpression QTL(eQTL)解析により検出した結果、最終的に6つのeQTLを見出すことに成功した。このうち、第4染色体上に検出されたeQTL-4は、遺伝子のプロモーター領域における両品種間の配列の違いによってもたらされる可能性が示唆された。また、根および葉における本遺伝子の発現量をRT-qPCRにより測定したところ、根における発現量は日本型品種よりインド型品種で有意に高く、葉においては両品種ともにほぼ発現していないことが確認された。 そこで、eQTL-4近傍に位置する遺伝子の両品種間においてプロモーター配列を比較した結果、インド型品種においてのみ、本遺伝子上流にDNAトランスポゾンの挿入が認められた。この挿入に伴う発現量への影響を検証するため、両品種由来の異なる長さのプロモーター領域とレポーター遺伝子を連結し、これらを導入した形質転換体を作成した。これらのレポーター遺伝子の発現量を比較した結果、日本型品種の本遺伝子上流0.5kbから1kbの領域を含む個体では、インド型品種の同領域を含む個体に比べ、有意に発現量が低下することが判明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度は根系のみでなく、地上部器官から採取したRNAを用いてeQTLの検出を試みる予定であったが、サンプルの調製が予想以上に困難であり、そこまでには至らなかった。しかし、予備的な試験を繰り返した結果、昨年度末までに調整の目処がたち、本年度の次世代シーケンサーを用いた解析へとスムーズに以降することが可能であった。しかし、その分、本年度の実験の進行に影響が出たため、「やや遅れている」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
日本型品種の当該遺伝子上流0.5kbから1kbの領域に関して、公開データベース(PPDB3.0等)を用いて既知のシス配列の検出を行う。両品種間において当該遺伝子座に異なるシス配列が存在した場合には、これが器官間の発現性の違いを支配する候補シス配列であるとみなし、1)ゲノム編集技術であるCRISPR/Cas9による本シス配列への変異挿入、および2)本シス配列に変異を挿入した人工プロモーターとGUSレポーター遺伝子を利用した発現解析により、器官間における異なる発現制御への本候補シス配列の関与を検証する。 さらにこの関与が認められれば、Yeast One-Hybrid法により当該シスを標的配列とする転写因子の同定をも視野にして解析を進めることで、本研究で取り組む新たなシス配列探索法が優れた手法であるのか否かについて最終的に判断する。
|
Causes of Carryover |
昨年度は根系のみでなく、地上部器官から採取したRNAを用いてeQTLの検出を試みる予定であったが、サンプルの調製が予想以上に困難であり、そこまでには至らなかった。しかし、予備的な試験を繰り返した結果、昨年度末までに調整の目処がたち、本年度の次世代シーケンサーを用いた解析へとスムーズに以降することが可能であった。しかし、その分、本年度の実験の進行に影響が出たため、計画した実験を全て修了するには至らなかった。そのため、次年度使用額が発生する結果となった。
|