2020 Fiscal Year Research-status Report
ピコルナ様ウイルスがミカンハダニの食性と繁殖に及ぼす影響とその制御要因の解明
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19K22308
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
刑部 正博 京都大学, 農学研究科, 准教授 (50346037)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | ピコルナウイルス / ミカンハダニ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ミカンハダニにおいて、カンキツ寄生時に特異的に発現する遺伝子中から発見したピコルナ様ウイルス(一本鎖RNAウイルス)について、全RNA配列の決定を行う。さらに、寄主植物特異的なウイルスの増殖と太陽光紫外線の影響を調べる。それらにより、植物成分や紫外線によるピコルナ様ウイルスの抑制の有無とミカンハダニへの負荷の変化を明らかにする。このため、昨年度よりピコルナ様ウイルスの全RNA塩基配列の決定に向け、主にウイルスの5'末端側の解読(5’-RACE)に取り組んできた。一方、過去に調査した3’末端側の塩基配列は、全く異なるミカンハダニ系統から分離されたウイルスに関するものであった。このため、本年度は5'RACEに加えて、3'RACEならびに3'側から5'側へ6,703bpの長鎖PCR増幅を行いDNA配列の再解析を実施した。これらにより、最終的に8,977塩基の配列を決定した。この配列についてORF解析を行ったところ、Hubei picorna-like virus 79 (KX884275.1; 9,186塩基) の主要な2つのORFであるhypothetical protein 1(APG78419.1; 2,054残基)およびhypothetical protein 2(APG78420.1; 845残基)との相同性がそれぞれ98%および97%と極めて高かった。しかし、KX884275.1とのDNA配列の比較では、5’末端側にさらに209塩基程度の未読領域が予想される。このため、今後も5’末端の分析を継続して、完全長を解読する予定である。一方、予想配列の主要部分(98%)が決定できたことから、本ウイルスに特異的なqPCR用プライマーを作成した。現在、ウイルス検出感度を検討しながら、寄主植物および紫外線環境の変化とウイルスとの関係の分析準備をしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
5'末端の配列の決定に時間が掛かっているのが進捗遅れの要因である。しかし、本年度、ORF全体を含む主要部分の大半(98%)が決定でき、検出用のデータが確定できた。これにより、次の飼育実験、サンプリング調査を並行して実施できるようになった。このことから、今後の研究は順調に進むものと期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
地域的な調査に関しては感染症の状況を踏まえつつ、調査方法を検討する。 令和2年度には、ウイルスの全配列の決定と並行してミカンハダニ野外個体群における分布調査を開始する予定である。なお、ウイルスの検出はリアルタイムPCRによる量的PCR(qPCR)によって行い、分布と同時にウイルスの増殖の状況を把握し、野外における寄主植物との関係を分析する。ここでは、プライマーの特異性が重要なポイントとなるため、必要に応じて設計の見直しを行い、信頼性の高いものを完成させる。これにより、室内実験における寄主植物影響並びに紫外線影響の分析手法を確立する。これらをもとに、計画書に示した作業仮説の検証を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
ウイルスの全塩基配列の決定に時間が掛かったため、飼育実験や野外サンプルの分析に使用する予定の試薬・消耗品費ならび地域調査用の旅費の使用が減少したのが、次年度使用額が生じた主な要因である。本年度の成果により、今後の分析調査の基盤が確立できた。したがって、次年度使用額については今後の分析およびサンプリング調査において活用する。
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