抗菌物質産生及び細菌捕食能を有する蜂蜜由来菌の探索と蜂病予防への応用可能性の検証

2021 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 19K22318
• Research Institution: National Agriculture and Food Research Organization
• Principal Investigator: 高松 大輔 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究部門, グループ長 (60414728)
• Project Period (FY): 2019-06-28 – 2022-03-31
• Keywords: ハチミツ / みつばち / 抗菌物質産生菌 / 腐蛆病菌

Outline of Annual Research Achievements

ハチミツ中には様々な菌が混入しているが、その潜在的な力については注目されていない。本研究は、国産ハチミツから分離した209株のハチミツ由来菌コレクションを利用して、みつばちやヒトには無害だが、病原体や薬剤耐性菌の排除に役立つ可能性のある菌（抗菌物質産生菌や細菌を捕食する細菌）が存在するか探索することを目的としている。昨年度までにハチミツ由来菌コレクションからみつばちの病原体である腐蛆病菌に強い抗菌活性を示すプロバイオティクス候補株を10株見つけることができた。しかし、これらをプロバイオティクスとして利用するためには、①抗菌活性の強い幼虫の餌（ローヤルゼリー）の中で生き残ってみつばちの幼虫の腸に届くこと、②幼虫にとって安全であること、③幼虫の腸内である程度増殖して抗菌物質を産生すること、の３つの条件を満たす必要がある。そこで本年度は、各株を餌の中で生き残れる芽胞の状態にして、約10万個/幼虫/日の容量でみつばちの幼虫に与え続け、幼虫の生存率と腸内での投与菌の増殖の有無を観察した。その結果、
（１）10株中5株は幼虫の死亡率を有意に上昇させ、幼虫に毒性を示すと判断された。
（２）残りの5株は幼虫への毒性は見られなかったが、幼虫内での芽胞の発芽・増殖が確認できず、幼虫腸内での抗菌物質の産生を期待できなかった。
（３）幼虫への毒性がなかった株のうち、Brevibacillus halotoleransは栄養型の状態でも幼虫の餌の中である程度の抵抗性があることがわかったため、栄養型の状態でも幼虫に投与し、幼虫の生存率と投与菌の増殖の有無を観察した。しかし、幼虫腸内での増殖は観察されず、腸内での抗菌物質の産生を期待できなかった。
以上の結果、腐蛆病菌に抗菌活性を示す菌は見つかったものの、プロバイオティクスとして利用するためには、腸内で増殖する能力を付与するなどの工夫が必要であることが判明した。