2023 Fiscal Year Research-status Report
植物耐虫物質の天然増強剤および増強されて機能する新規耐虫物質の探索・解明・利用
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19K22321
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
今野 浩太郎 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 上級研究員 (00355744)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2025-03-31
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Keywords | シュウ酸カルシウム針状結晶 / 植物耐虫性物質増強効果 / キチナーゼ / サトイモ科植物 / 摂食拒否効果 / 痛み物質 / 相乗効果 / 増強効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、ヤマノイモおよびStreptomyces griseusのキチナーゼ(共にFamily19という植物に存在するキチナーゼである)とシュウ酸カルシウム針状結晶が共存すると相乗的致死効果を発見していたが、昨年度動物に普遍的に見られるFamily18のキチナーゼ(Trichoderma viride由来)も針状結晶の存在下で昆虫毒性を示すデータを得た。そこで本年度Family18キチナーゼとシュウ酸カルシウム針状結晶の相乗効果(相乗的致死効果)の存在を詳細に調べた。T. viride(Family19キチナーゼ1%溶液)(1量と定義)をシュウ酸カルシウム針状結晶1量をヒマの葉に塗布してチョウ目幼虫に摂食っせた場合(キチナーゼ:針1量ずつ)1日後に80%の致死率を示したのに対しキチナーゼ2量のみでは20%の致死率針2量では0%の致死率であった。またキチナーゼ2量針1量を塗布摂食させた場合は90%致死であったのに対し針4量で40%致死、針1量で0%致死であった。いずれの結果からもFamily18キチナーゼと針状結晶の間に顕著な相乗効果が定量的に確認できた。 サトイモ科植物(ポトス)の針状結晶が関わる摂食拒否行動誘起効果は、ポトスの葉をヘプタン等有機溶媒中で粉砕時に有機溶媒中に懸濁してくる針状結晶は葉に塗布しチョウ目幼虫に与えることで摂食拒否効果を検出できる。そこで、葉組織中で針との共存物質を抽出するため針を大量に含む異形細胞の選択的回収を試みたが異形細胞は葉肉細胞中に埋没しており分離が困難性が判明した。一方、有機溶媒中に懸濁している針を多量に集め有機溶媒を蒸発させ表面付着痛み物質を水系溶媒で溶出し構造決定を行うことも試みたが、有機溶媒に懸濁する針状結晶を乾燥させると針が容器物質に固着し有機系溶媒でも水系溶媒でも溶出不可能なことが判明し実験上の問題点が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
キチナーゼとシュウ酸カルシウム針状結晶の相乗的耐虫効果(昆虫致死活性)に関してはこの現象が植物キチナーゼが所属するFamily19キチナーゼだけでなく動物に一般的で広く生物界に存在するFamily18キチナーゼも含めて一般的に成り立つことを定量的に示すことが出来た点では十分な進歩があったといえる。この意味では順調な進歩があったと言えるが論文化がやや遅れている。サトイモ科におけるシュウ酸カルシウム針状結晶と何らかの物質の相乗作用による顕著な昆虫に対する摂食阻害活性(防御活性)については現象の存在は十分に示すことが出来顕著な進展があったといえるが、シュウ酸カルシウムと共存して顕著な摂食拒否活性を起こす物質の解明に関しては、少し滞っていることを認めざるを得ない。これはシュウ酸カルシウムが微細であり扱いが難しいことに原因があると思われる。有機溶媒中でサトイモ科の組織を粉砕することで有機溶媒中に摂食阻害活性を保ったままで懸濁したシュウ酸カルシウムとして回収することが可能であることが分かっているが、一度乾燥させると試験管などの容器壁面に付着したままになり有機溶媒にも水にも再懸濁しなくなりその後の分析に困難が生じたがこの問題が解決できないままであるため、シュウ酸カルシウム針状結晶表面に存在する摂食拒否活性物質の精製作業が滞ってしまっている。また、シュウ酸カルシウム針状結晶がサトイモ科植物葉中で集中して存在している異形細胞の分離も異形細胞が葉肉細胞に埋もれて存在しているためうまく行っていない。以上のようにサトイモ科植物のシュウ酸カルシウム針状結晶の表面に存在している摂食拒否物質の同定には至っていない。この点で研究の進展にはいくらかの遅れがあった。
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Strategy for Future Research Activity |
サトイモ科の植物(ポトス)のシュウ酸カルシウム針状結晶と共存して昆虫に摂食拒否行動を起こす物質に関しては、有機溶媒中に本来親水性であるはずのシュウ酸カルシウム針状結晶が懸濁するという不可解な事実から針状結晶表面に何らかの疎水性物質が存在している可能性があり、これが懸濁液を乾燥したときに針状結晶を容器表面に固着させ以後の針状結晶とその表面に存在すると思われる摂食拒否行動誘起物質の回収を困難にしているものと思われる。今後はこれらの点の確認をした上で活性を保ったままで針状結晶を処理する方法を確立し表面に存在する物質の同定を試みる方針である。シュウ酸カルシウム針状を含む異形細胞の分離もプロトプラスト作成の方法を参考にして試みたい。 シュウ酸カルシウム針状結晶とキチナーゼの相乗効果に関してはデータが揃ってきているので論文化を行いたい。
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Causes of Carryover |
この課題の期間にコロナウイルスの流行があり、自宅待機期間などがあり全体的に計画遂行が遅れてずれ込んだことが今回次年度利用が生じた背景としてある。その上、サトイモ科植物に含まれるシュウ酸カルシウム針状結晶を共働する昆虫摂食拒否行動誘起物質が針状結晶に着いたまま回収することが、有機溶媒中に活性を保ったまま針状結晶を回収できるが有機溶媒中を乾かすと針状結晶が容器表面に付着したままになり、その後有機溶媒でも水系溶媒でも懸濁してこないという困難が生じ以後の活性物質の回収・分析にまで行きつけなかった。一方、サトイモ科植物葉からシュウ酸カルシウムを含む異形細胞を分離してくることも考えたが、こちらも異形細胞が葉肉細胞に深く埋もれていて分離のめどが立たなかった。以上のような事態が生じ、実験計画が遅れてしまい次年度使用が生じてしまった。キチナーゼとシュウ酸カルシウム針状結晶の相乗的致死作用についてはデータは集まってきているが、論文発表にいたっていないため次年度(令和6年度)に出版に向けた作業を行う必要があり、これも次年度使用が生じたもう一つの理由である。
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