2020 Fiscal Year Annual Research Report
重力屈性の発現と器官屈曲状態の維持に果たすリグニンの役割の解明
Project/Area Number |
19K22326
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
梶田 真也 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40323753)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笠原 博幸 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (00342767)
堀川 祥生 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (90637711)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | リグニン / 変異体 / クワ / 木材 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の細胞壁は、細胞や器官、個体の形状維持に加え、重力に逆らった上方への伸長生長、更には倒伏した枝条の起き上がり等に重要な働きを持つ。赤材桑はリグニンモノマー合成の最終段階に関与するシンナミルアルコールデヒドロゲナーゼを欠損する自然突然変異体であり、枝条が倒伏しやすい形態を示す。本研究では、この特異な生長特性を示す品種を使い、屈性に果たすリグニンの役割の解明を目的として実施した。 屋内で育てた赤材桑の枝条は当年枝の生長初期から比較的倒伏しやすく、伸長に伴って次第に枝の傾斜が大きくなり、最終的には枝が匍匐した。一方、野外で地植えした個体でも生長するに従って当年枝は次第に傾斜したが、傾斜の開始が室内よりも遅く、傾斜が始まる時期の枝条は、屋内に比較して野外での栽培の方が長かった。いずれの生育環境においても、発芽後の当年枝は上方へ伸長することから、光屈性や重力屈性には問題がないと推察された。通常、広葉樹の多くでは枝条の倒伏からの起き上がりに引張あて材が形成されるが、赤材桑では倒伏からの回復が極めて弱いため、あて材の形成が期待できなかった。そこで、伸長した枝を円形に丸めて固定することで、応力刺激による木部の偏心やあて材の形成の確認を試みた。その結果、木部の偏心とあて材様の組織の形成が確認された。これらのことから、赤材桑では、屈性に対する個体の反応に加えて、重力刺激に対する通常の反応機構を持ち合わせていることが推察された。応力刺激による遺伝子の発現変動についても調査を試みたが、クワの遺伝情報が少なく、また部位別の核酸回収が難航したため、十分な情報が得られなかった。得られた結果を総合すると、赤材桑で屈性発現が微弱な原因は、内在性のシグナル応答の障害というよりは、リグニン合成酵素遺伝子の欠損による細胞壁内のリグニン含有量の低減、或いはリグニンの分子構造の変化に因るものであると考えられる。
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Research Products
(7 results)