2020 Fiscal Year Research-status Report
introduction of novel fatty acid desaturase activities by hybridization in flatfishes
Project/Area Number |
19K22329
|
Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
吉崎 悟朗 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (70281003)
|
Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
|
Keywords | DPA / 脂肪酸代謝 / 異体類 |
Outline of Annual Research Achievements |
ドコサヘキサエン酸(DHA)は海産魚の必須脂肪酸であり、養魚飼料にはDHAを含む魚油を添加する必要がある。植物油に含まれるα-リノレン酸(ALA)からDHAを作るには2段階の炭素鎖数の延長と3か所に二重結合を導入すること(不飽和化)が必要である。申請者は、各種カレイ・ヒラメ類が保持する脂肪酸不飽和化酵素(FADS)のcDNAを網羅的に解析し、熱帯域に生息する小型シタビラメ類が、ALAからDHAを合成する際に必須な3か所全てに二重結合を導入可能な三機能性のFADSを持つことを発見した。本研究では、大型で美味な日本産の食用シタビラメ類と熱帯産種を交雑することで、食用種の特徴を具備しDHAも合成可能な新たな品種を作出することを目指している。雑種化により両種由来の脂肪酸代謝酵素が補完しあうことで、得られた次世代個体はALAからDHAを効率的に生産し、植物油で飼育可能になると期待される。 本年度は東南アジア産の淡水型ササウシノシタであるBrachirus villosusとDHA合成能を保持しないシタビラメ類との雑種作成に挑戦した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DHAを合成する能力を保持しない海産種であるシマウシノシタの安定的な入手経路を確保した。しかし産卵期に房総半島沿岸の定置網で漁獲されたシマウシノシタは雌のみであった。そこで、シマウシノシタを雌親に、ALAからDHAを合成可能な淡水種であるBrachirus villosusを雄親に用いて雑種作成を試みた。まず、シマウシノシタ雌親魚から安定的に採卵する技法構築を目指し条件検討を行った結果、腹部が膨満し卵黄蓄積が完了したと予測される個体に500IU/Kgのヒト胎盤性生殖腺刺激ホルモンを投与し、42時間後から経時的に排卵を確認することで良質卵を高率で採取可能であることを見出した。なお、採卵に成功した場合、一個体から10,000粒程度の未受精卵の採取が可能であった。 同様の濃度のhCGを投与することでBrachirus villosusからも精液を採取することを試みたが、今年度はこれらの処理個体から精液を搾出することはできなかった。そこで、これらの親個体の精巣を単離した後、これをPBS中でミンスすることで精巣精子の採取を行った。さらに、調整した精液をシマウシノシタの未受精卵と海水中で授精させた結果、9320粒のうち2粒が胚体形成期に到達した。これらのF1個体が間違いなく雑種であることを確認するため、DNAを抽出し、fads2遺伝子に対するプライマーを用いたPCRにより両種のアリルを保持していることを確認した。その結果、これらの胚体はまちがいなく両種の雑種であることが判明した。以上のように本年度は海産種の卵と淡水種の精子が海水中で受精することが可能であり、得られた雑種は胚体形成期にまで発生可能であることを明らかにした。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、海水中でのBrachirus villosusの精子の運動能を改良するために、その賦活化を試みている。本種の精子は上述のように精巣から直接調整したものであり、精巣精子が成熟する場である輸精管を通過していない。このことが問題である可能性を考慮し、各種人工精漿中で精巣精子を培養することで精子の運動活性が上昇しないかを解析中である。これらの方法により精子の賦活化に成功すれば、得られた精液とシマウシノシタの未受精卵を受精させることで、より高頻度で雑種の作出が可能になることが期待される。また、本交雑に用いる候補種としてはBrachirus panoidesも考えられるため、本種のもつ脂肪酸代謝酵素のクローニングも進行中である。さらに、新たにウシノシタ科の淡水種および海水種においても脂肪酸代謝酵素cDNAのクローニングを進行中である。
|
Causes of Carryover |
Covid-19の感染拡大防止のため、飼育実験を行っている東京海洋大学館山ステーションの利用に大幅な制約が生じ、飼育実験の試行回数を減らさざるをえなかった。これに伴い、飼育にかかる餌代、水槽等の飼育施設の購入費、さらに飼育魚の分析に必要な分子生物学的解析用の試薬代に余剰が生じた。これらの実験は令和三年度に繰り越して遂行する予定である。
|
Research Products
(3 results)