2020 Fiscal Year Research-status Report
逆平行鎖セルロース分子集合体の合成 -マーセル化を深く理解するために-
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19K22334
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上高原 浩 京都大学, 農学研究科, 教授 (10293911)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | セルロース |
Outline of Annual Research Achievements |
セルロースのマーセル化とはセルロースのアルカリ膨潤処理のことを言う。マーセル化によりセルロースの結晶構造はセルロースI型からセルロースII型に変化する。セルロースI型はセルロース分子鎖が平行に、セルロースII型は逆平行に配向していると言われている。本研究では、隣り合う分子鎖が逆平行であるセルロース分子鎖集合体を合成し、『マーセル化がセルロース分子鎖の方向に与える影響』に関して新知見を得る。研究計画に従い、2年目の本年度は下記の通り成果を得た。 1. 非還元末端グルコース残基4位にアジド基を導入したセロビオース誘導体の収率の向上: cellobiose octaacetateから1段階の反応で誘導できるphenyl 2,3,4,6-tetra-O-acetyl-β-D-glucopyranosyl-(1→4)-2,3,6-tri-O-acetyl-1-thio-β-D-glucopyranosideを出発物質とし、非還元末端グルコース残基4位にアジド基を導入したセロビオース誘導体をより高い収率で得られる合成経路を確立した。 2. 逆平行鎖モデル化合物の合成: (1) 還元末端グルコース残基1位にアジド基が導入されたセロビオース誘導体を3-(triisopropylsilyl-propargyloxy)-5-(propargyloxy)-benzyl alcoholと反応させ、(2) その後triisopropylsilyl基を除去し、(3) 得られた化合物を非還元末端グルコース残基4位にアジド基を導入したセロビオース誘導体と反応させ、逆平行鎖モデル化合物を合成した。 以上、セルロース分子のモデルとしてのセロビオース誘導体の合成はほぼ完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
セルロース分子のモデルとしてのセロビオース誘導体の合成はほぼ完了したが、セルロース誘導体の合成は道半ばであるから。最終年度である次年度は、これまでに得られた知見を元にセルロース誘導体の合成を達成し、セルロースのマーセル化の理解に繋げたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は2020年度に得られた知見を元に下記の通り研究を推進する。 1. セロビオース誘導体合成に関する知見を低分子量セルロースへと応用する。 2. 一時的保護基除去法の確立:ベンジル保護基を水素気流下10% Pd(OH)2 on carbonにより除去する。 3. 逆平行鎖セルロース分子鎖集合体の合成とマーセル化に伴う結晶構造変化の観察: イオン液体中でシランカップリング剤との反応、SiO2基盤上への固定化を行う。次いで、17.5% 水酸化ナトリウム水溶液処理を行い、結晶構造に関する知見を蓄積する。
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Causes of Carryover |
新型コロナの蔓延による影響により、当初出席を予定していた学会が中止になるなどの影響で、研究成果の発表機会が失われたため。本年度は、オンラインによる学会発表も含めて積極的に学会参加し、研究成果をアピールする予定である。
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Research Products
(1 results)