2019 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the iron metabolism mechanism for geomagnetic sense
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19K22341
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
山下 倫明 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産大学校, 教授 (80344323)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 鉄 / 磁気微粒子 / ゼブラフィッシュ / 鉄代謝 / 地磁気感覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
魚類や他の高等動物においても磁性細菌のようなマグネタイトを脳神経系の細胞内に有しており,磁気感覚を地球上の行動に利用する可能性が考えられる。走磁性細菌や魚類などの生物体内から磁性微粒子(主成分Fe3O4)が見出されている。走磁性細菌は,細胞内に50~100 nmの磁性微粒子を有しており,地磁気を感知できることが知られている。サケ科魚の頭部には磁性微粒子が検出されたこと,ゼブラフィッシュやティラピアの行動試験では磁性感覚があることが報告されたことから,魚類の脳神経系に磁気センサーを有することが示唆されているが,高等動物の磁性微粒子の化学性状や生物応答は未解明の課題である。本研究は,魚類の脳神経系から,磁性微粒子を単離精製し,鉄を含む金属の化学性状,鉄代謝メカニズムおよび本能行動との関連性を明らかにする。本年度は,磁性微粒子の化学形態別の鉄の分析法を確立した。磁気ビーズ(BioRad),ミオグロビン,ヘミンなど化学形態の異なる鉄化合物を硝酸・過酸化水素混液(3:1,v/v)で100℃・5時間加熱し,無機化し,ICP-MSで鉄濃度を測定した。分析に用いた磁性微粒子標品の鉄濃度は0.14 mg/kgであり,鉄含量は20%であり,マンガン,ニッケル,セレン,水銀,鉛などを微量に検出した。ゼブラフィッシュ仔魚など千尾から1万尾の脳から1mg程度の磁気微粒子を精製することによって化学性状を明らかにすることができると推定された。また,HPLC-ICP-MSによって,GPCカラムを用いて鉄の化学形態別濃度を測定できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
魚類脳から磁気微粒子をミリグラムオーダーで精製する必要が確認され,現在,大量精製を進めている。飼育環境が不十分であったが,ゼブラフィッシュ水槽装置が6月から稼働したので,鉄代謝に関わるモデル魚の作製を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
鉄およびその他の金属成分,脂質成分,タンパク質など磁性微粒子の化学成分を分析し,細胞膜,エンドソーム,リソソーム,細胞質等に由来する細胞内タンパク質が含まれているかどうかを調べる。磁気微粒子を抗原としてウサギ抗血清を作製し,細胞・組織内の磁気微粒子の局在性を分析する。ニューロフィリン,ヘムトランスポーター,フェリチン等の脳神経系において鉄の蓄積および代謝に関与する遺伝子群を対象としてゼブラフィッシュの遺伝子ノックダウン・ノックアウトによって磁気微粒子の生成が抑制されることを観察する。鉄欠乏の配合餌料を作製し,成魚に投与して,鉄欠乏状態で魚類の飼育試験を行う。鉄欠乏によって脳神経系における磁気微粒子の生成や鉄の蓄積,その代謝系が抑制されるかどうかを観察する。磁気感覚のバイオアッセイ法を用いて,磁気微粒子の発現・代謝の抑制によって磁気感覚が喪失することを観察する。
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Causes of Carryover |
水槽および実験器具類の購入が遅れた。次年度に購入するとともに,研究補助者としてリサーチアシスタントを雇用する予定である。
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