2019 Fiscal Year Research-status Report
植物は自らが過去に経験した光環境の情報をどのように処理・利用しているのか?
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19K22343
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松田 怜 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (20547228)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 光順化 / LMA / クロロフィル / 光合成 / キュウリ / 白色LED / PPFD / モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,脳という記憶・情報処理器官を持たない植物が,いかにして自身が経験した環境,特に光強度の時間変動の情報を処理し,自身の「体づくり」,すなわち環境に応じた生理的・形態的特性の変化に利用しているのかを,数理モデルで表すことである。このことは,施設園芸において植物生育や収量を予測し,望ましい特性を有する植物を環境制御によって作り出すなど,植物生産の高効率化を図る上で重要であると考える。 本年度は,出葉後の明期における光合成有効光量子束密度(PPFD)の経日変化が,個葉の生理的・形態的特性に及ぼす影響を,キュウリ第1本葉をモデル実験系として,室内実験により調べた。光源に蛍光体利用白色LEDを用いて,播種後11~16日目の6日間のうち,前期(11,12日目),中期(13,14日目),後期(15,16日目)のそれぞれの2日間の明期PPFDを,100,400,または700 μmol m-2 s-1に制御した。16日目に,光順化に関する生理的・形態的特性として,葉の厚さの指標である葉面積あたり葉乾物重,クロロフィルa/b比,光合成ガス交換速度から算出される最大カルボキシレーション速度および最大電子伝達速度を評価した。その結果,6日間の平均PPFDが同じであっても,前期・中期・後期における明期PPFDの変化パターンが異なる処理区間では,一部の生理的・形態的特性に有意な差が認められた。そこで,過去に経験したPPFDの重みをより小さく評価する加重平均PPFDを用いたところ,平均PPFDを用いる場合と比べて,今回の実験系における光順化の程度をより精度よく記述できることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画調書および交付申請書に記載した研究計画にしたがって研究が進展しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
実験では,異なる時間スケールで明期PPFDを変化させた際の光順化応答について検討する。具体的には,1日ごと,または1日の中での秒~時間オーダでPPFDを変化させ,光順化に関わる生理的・形態的特性を評価する。また,生育ステージの異なる葉を対象とした実験も検討する。 モデル構築では,時系列分析の適用可能性を検討する。特に,光順化応答への時系列分析の適用に必要なデータ量を,シミュレーションによって明らかにすることを目指す。
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Causes of Carryover |
本年度は主に実験遂行・データ取得を中心に研究を進めたため,取得したデータにもとづく数理モデル構築のために支出する予定であった人件費・謝金等を使用しなかったことにより,次年度使用額が生じた。次年度は,実験遂行のための消耗品費等と合わせて,当該人件費・謝金等にも助成金を使用する計画である。
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Research Products
(4 results)