2020 Fiscal Year Research-status Report
Plant-human communication by plant volatile compounds and its application for prolonging the shelf life of leafy vegetables
Project/Area Number |
19K22348
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
黒木 信一郎 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (00420505)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 誠 神奈川県農業技術センター, 生産環境部, 課長 (20503650) [Withdrawn]
山内 靖雄 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (90283978)
曽我 綾香 神奈川県農業技術センター, 生産環境部, 主任研究員 (60503638)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | みどりの香り / 放散成分プロファイリング / トランス-2-ヘキセナール / シス-3-ヘキセニルアセテート |
Outline of Annual Research Achievements |
異なる貯蔵温度および貯蔵期間のホウレンソウ葉から放散される揮発性化合物を加熱脱着ガスクロマトグラフィー・質量分析(GC-MS)法を用いて分析し、鮮度低下との関連性を検討した。揮発性化合物のピーク面積を説明変量、貯蔵積算温度を目的変量とする部分最小二乗回帰分析の結果、脂肪酸の過酸化分解に伴う代謝物質由来と考えられるみどりの香りや植物体のストレス防御や情報伝達関連成分により活性化されるテルペン合成系代謝物質など、テルペン、アルコール、炭化水素および未同定の10種の揮発性有機化合物が、鮮度を説明する重要な物質であることが明らかとなった。また、Variable Importance in Projection(VIP)値が1.5以上となった同10種の化合物の階層クラスター分析によって、貯蔵積算温度ごとにこれらの化合物の構成比が異なることが示された。他方、ヨウ化カリウムやキシレノールオレンジを用いる過酸化水素濃度の定量法では、植物由来の抗酸化物質による過小評価が生じるため、抽出サンプルごとにカタラーゼ処理および添加回収試験を組み合わせた定量が必要であることを明らかにした。また、シロイヌナズナを対象に、シス-3-ヘキセニルアセテート施与による病害抵抗性付与の効果を調査した結果、シス-3-ヘキセニルアセテートには直接的な抗菌活性がないこと、既知の病害抵抗性因子である活性酸素種の発生やサリチル酸蓄積には関与していないこと、およびエチレン応答遺伝子を抑制する一方で、サリチル酸応答遺伝子などを誘導することによって、アブラナ科炭疽病菌への抵抗性を向上させている可能性があることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
収穫時の切断に起因してサンプル自身から放出されるみどりの香りは、貯蔵初期、すなわち切断直後に高濃度であるものの時間経過と共に低下することを確認した。また、みどりの香りとそれ以外を含む放散成分のプロファイリングにより、収穫後の鮮度状態と放散成分との間に定量的な関係があることが明らかになってきた。さらにモデル植物を用いた実験および文献調査から、みどりの香りの成分によって直接的あるいは間接的に病原抵抗性が発揮されることが分かってきた。GC-MS分析のガス捕集方法についても改善を進めている。一方、人為的にみどりの香りを持続的に施与することによる、収穫後生理への影響については、コロナ禍で共同実験の機会が極めて得難かったことから進展が少なかった。以上を総合すると、本研究課題の遂行のための実験装置および手法の開発状況は極めて良好であるものの、人為的ガス制御環境下における実験の実施には遅れがみられると自己評価される。
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Strategy for Future Research Activity |
外因性の揮発性有機化合物が緑葉の黄化および品質低下の抑制に与える影響について検証する。また、自動画像計測装置を製作し、貯蔵中の外観および内部品質の非破壊計測法を開発する。さらに、揮発性有機化合物への暴露経験の有無、あるいは暴露期間の多寡が、収穫後の緑葉の栄養的および機能的品質に与える影響を調査する。これらにより、収穫後ベビーリーフの品質の維持・強化に対して好適な揮発性有機化合物やその配合を探索し、揮発性有機化合物を能動的に利用して青果物に錯覚的なフィードバック制御を生じさせるという、これまでにない新機序での品質保持技術を開発することを目指す。
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Causes of Carryover |
学内植物生育設備の故障、および新型コロナウィルスの影響による生産農家からのサンプル入手の難航により、十分な量のサンプルの確保が難しかったと共に、コロナ禍によって研究機関間の移動が制限され、共同実験の実施が極めて困難であったため。短期間で効率的な実験を実現するため、デシケータやガス分析に関わる消耗品、および成分分析に必要な試薬や消耗品の購入に充てる。
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