2021 Fiscal Year Research-status Report
宇宙線を利用した超小型物理探査装置の開発とため池群の広域リスク評価
Project/Area Number |
19K22349
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
西村 伸一 岡山大学, 環境生命科学学域, 教授 (30198501)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴田 俊文 岡山大学, 環境生命科学学域, 准教授 (30342546)
珠玖 隆行 岡山大学, 環境生命科学学域, 准教授 (70625053)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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Keywords | ため池 / 物理探査 / ミューオン探査 / 模型実験 / CPTU / クロスホールミューオン探査 |
Outline of Annual Research Achievements |
西日本豪雨災害においは,多くのため池が損傷を受けた.この決壊および損傷原因の中で,パイピングとせん断破壊に対しては,堤体内部の弱部の推定が重要である.しかし,広域リスク評価の実施にあたって,ため池個数は膨大であり,対象地区全体のリスク評価を行うことは事実上不可能である.地質調査は,ボーリングが基本であるが,非常に時間とコストがかかる.この問題を解決するのは,最も簡便に地質情報(ここでは,地盤強度)を計測できる物理探査が最も有効な手段と考えられる.本研究では,宇宙線の一つであるミュー粒子物理探査を利用して,地盤同定の高精度化を図る.この目的に対して,効率的に多点でミューオン探査を実施するため,電気式コーン貫入試験(CPTU)による穿孔を利用したクロスホールミューオン探査手法の確立を目指している.2021年度は,この完成に向けて,2020年度から引き続き基礎実験を実施した.作成された模型土層において,2機のミューオン探査用シンチレータを,模型土層を挟むように分離して配置し,模型地盤内部密度の同定可能性を検討した.2021年度は,計測器の設置方法と計測精度を検討するため,シンチレータの設置位置の同定を精密に行った.結果として,現状の設置方法では,計測精度を十分に得られないことが明らかになった.さらに,計測精度を検証するために,長さ1mのコンクリート塊の密度を計測する実験を実施した.この場合も,十分な計測精度を得るためには長期の計測が必要なことが判明した.最終的に,実験スケールが計測精度に与える影響が非常に大きいことが分かったので,精度を得るためには,現地サイズの実験が必要であるという結論に至った.そこで,2021年度は現地仕様のクロスホールミューオン探査装置の設計を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度で研究を完成させる予定であったが,精度検証を行う過程で,当初計画していたミューオン試験装置を設計変更することが必要となり,試験機の試作に遅れが生じた.コロナ禍のため,精度検証の試験自体にも遅れが生じ,設計がさらに遅れることになった.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は,達成されていないクロスホールミューオン探査装置の開発と,基礎実験を達成する予定である.具体的には,次の手順によって研究を進める. (1) 既存型ミューオン探査装置を用い,2021年度から開始したコンクリート塊を用いた模型実験を継続する.これによって,計測精度を担保する計測期間を明らかにする.(2) 孔の中で使用する小型シンチレータの試作を行う.(3) 完成されたシンチレータを使用し,模型地盤によって設置方法を検討する.(4) 現地での実証実験を行う.
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Causes of Carryover |
クロスホールミューオン装置の試作が遅れている関係で,試験を実施することができなかったため,次年度使用金額が生じた.2021年度に設計を行い,2022年度の試験機の試作と現地試験の補助として,残りの予算を重点的に投入する.
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