2019 Fiscal Year Research-status Report
尿路関連リンパ組織の発見から展開する新たな腎泌尿器免疫学
Project/Area Number |
19K22352
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
市居 修 北海道大学, 獣医学研究院, 准教授 (60547769)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
昆 泰寛 北海道大学, 獣医学研究院, 教授 (10178402)
エレワ ヤセル 北海道大学, 獣医学研究院, 助教 (30782221)
中村 鉄平 北海道大学, 獣医学研究院, 客員研究員 (80786773)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 獣医学 / リンパ組織 / 腎泌尿器 / 腎盤 / 尿路 / 尿路関連リンパ組織 / UTALT / 免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
局所で発達するリンパ組織は、感染防御において重要な役割を果たしている。特に近年、粘膜関連リンパ組織や脂肪関連リンパ組織の役割が注目されており、前者は眼、気道や腸管等で、後者は縦隔や腸間膜で発見されている。一方、尿生殖器は外界に接し、外来抗原の暴露を受けると考えられるが、腎泌尿器あるいは生殖器関連リンパ組織に関する知見は乏しい。 そこで本研究では、動物の腎泌尿器に着目し、そのリンパ組織の形態機能を明らかにすることを目的としている。これまでマウスをモデルとして、その存在を検索している。腎臓、尿管および膀胱について検索したところ、健常マウスの腎盤および膀胱の粘膜にリンパ組織の形成が認められた。特に後者は加齢マウスで発達する傾向にあった。これらのリンパ組織は、T細胞、B細胞およびマクロファージ等で構成されていた。いずれも、移行上皮直下に形成されており、粘膜関連リンパ組織様の形態を有した。一方、現在のところ、粘膜関連リンパ組織にみられる濾胞関連上皮細胞やM細胞の存在は確認されていない。また、腎盤のリンパ組織の発達は部位および個体で異なり、概して、リンパ組織内に膠原線維や細網線維を発達させた。我々は、これらリンパ組織を “尿路関連リンパ組織、Urinary Tract-Associated Lymphoid Tissue (UTALT)” と名付けた。また、慢性腎臓病モデルマウスのUTALTは健常マウスに比べて発達しており、腎病態との関連が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度は健常動物の検索中心に進める予定だったが、病態モデル動物からのデータも得ることができた。次年度の計画を先取りして進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
動物の尿路関連リンパ組織(UTALT)の病態意義に関する研究を、腎病態モデル動物を用いて進める。 ① UTALTを構成する免疫担当細胞の同定と病態変化:健常マウスと腎病態(慢性腎臓病)モデル動物から腎盤を採取し、網羅的に遺伝子発現解析を進める。得られた結果から、細胞マーカーに関する遺伝子発現動態を明らかにする。また、それらの発現を両群で比較することで、病態群で増加する細胞ポピュレーションを明らかにする。特に免疫担当細胞に焦点を当てる。同時に、定量的PCRや免疫染色でも検証する。 ② UTALTの発達に関与する分子群の同定:①で得た結果を基に、ケモカイン・サイトカイン等の分子に焦点を当て、両群の腎盤におけるそれらの遺伝子発現動態を解析する。同時に、定量的PCRや免疫染色でも検証する。 ③ 腎病態との相関解析:①および②で明らかにした腎盤UTALTにおける細胞や分子の動態と腎病態の関連性を病理解析から明らかにする。 以上の作業から、UTALTを構成する細胞・分子、それらの病態意義を明らかにする。
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Causes of Carryover |
本年度は当初計画よりも進み、次年度計画に更なる解析事項を加えたため、次年度・次々年度に比較的高価な遺伝子発現試薬等を集中的に購入する計画に変更した。
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