2020 Fiscal Year Annual Research Report
腫瘍特異的糖鎖修飾を標的とした腫瘍細胞と腫瘍関連線維芽細胞に対する新たな抗体療法
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19K22361
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西村 亮平 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (80172708)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 幸成 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 教授 (00571811)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 犬 / 抗体療法 / 固形腫瘍 / ポドプラニン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、犬悪性腫瘍細胞に発現するポドプラニンを標的とした抗体療法の有効性・安全性の検証による新たな治療法の確立を目指した研究に取り組んだ。本年度は、昨年度に引き続き、犬キメラ化抗イヌポドプラニン抗体を用いた臨床試験を行った。新型コロナ感染症に伴う診療制限の影響はあったものの、順調に症例を臨床試験に組み込むことに成功し、多くのデータが得られた。これまでに、5頭の犬悪性黒色腫症例を対象に、臨床試験を実施し、有害事象に関しては、抗体を投与した全頭で、炎症マーカー(CRP; C-reactive protein)の上昇を認めた。CRP上昇は、抗体投与による治療に伴う反応や抗体に対する異物反応、二次的な抗腫瘍免疫応答を反映している可能性、抗体投与とは関係なく腫瘍そのものの増悪による反応など、様々な要因が考えられ、明確な原因の特定はできなかった。うち1頭に関しては、治療反応と共に、CRPの上昇を認め、治療効果に関連したCRPの増加である可能性が示唆された。その他の有害事象として、抗体投与後の軽度な嘔吐が1頭で認められた。認められた嘔吐は、制吐薬によりコントロール可能なものであり、軽度な嘔吐は他の抗体療法においても一般的な副作用の一つとして認められており、許容できるものと考えられた。 治療効果に関しては、1頭で腫瘍病変の維持(SD)、1頭で一部転移病変の縮小を認め、本抗体療法の有効性が示唆された。今回、臨床試験に組み込まれた症例は、いずれも既存治療抵抗性の末期症例であり、治療効果の観察においては制約のある集団であったので、今後、より早期ステージ症例の組み込みや治療効果と関連するバイオマーカーの同定により、さらに高い治療効果が期待される。以上、本研究では、当初の予定であった犬キメラ化抗イヌポドプラニン抗体の臨床的安全性・有効性の検証を達成し、当初計画を大きく上回る研究成果が得られた。
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Research Products
(4 results)