2020 Fiscal Year Annual Research Report
TIL療法の限界を克服する~メトホルミンを用いた代謝調節によるT細胞若返りの試み
Project/Area Number |
19K22362
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中川 貴之 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (40447363)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 犬 / 腫瘍浸潤リンパ球 / TIL療法 / 固形腫瘍 / 腫瘍免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、活性化したTIL浸潤の多い犬固形腫瘍の種類を特定するために、手術で摘出した腫瘍検体のパラフィン包埋ブロックを用いたグランザイム陽性T細胞数を検証した。その結果、昨年度同定した犬膀胱癌に加え、乳腺癌や肛門嚢腺癌などに活発なTIL浸潤を認めることがわかった。免疫原性が高いと考えられている犬悪性黒色腫および上記腫瘍種を中心に、TIL培養を試みてきた。しかし、今年度初頭より流行した新型コロナ感染症の対策に伴う診療制限により、診療症例数の激減や臨床部門と研究部門の連携困難などが生じ、当初計画していた大量の臨床検体の確保が困難となった。そこで、昨年度、新たに発見したT細胞の増殖環境のアミノ酸代謝を制御することでT細胞の若返りに関連する可能性のある酵素(Indoleamine 2,3-dioxygenase;IDO)について、臨床検体を必要とせずできる実験に注力して並行して兼用を開始した。IDOは様々な犬固形腫瘍において発現しており、とくに犬膀胱癌細胞株においてはその発現が強かった。また、パラフィン包埋検体の解析においても、腫瘍細胞および免疫細胞において、IDOの発現を認めた。そこで、犬膀胱癌細胞株と犬免疫細胞との共培養系にIDO阻害剤を添加することで、抗腫瘍免疫応答が増強するか検証した。その結果、IDO阻害剤により、犬T細胞の増殖や細胞傷害活性が顕著に増加し、犬腫瘍および免疫細胞に発現するIDOが、抗腫瘍免疫細胞を抑制しており、さらにそれらを阻害することで、抗腫瘍免疫応答を増強できる可能性が示された。現在、新型コロナ感染症対策による診療制限が緩和されてきているので、手術で採取した臨床生検体を用いて、メトホルミンに加え、IDO阻害剤によるT細胞老化の改善作用、TIL培養の効率化作用の検証を進めている。また、上記結果は国際誌へ投稿中(1本)および投稿準備中(2本)である。
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