2020 Fiscal Year Research-status Report
メラノーマ由来内在性レトロウイルスの機能解明と獣医臨床への応用
Project/Area Number |
19K22365
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮沢 孝幸 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 准教授 (80282705)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水野 拓也 山口大学, 共同獣医学部, 教授 (90398826)
中川 草 東海大学, 医学部, 講師 (70510014)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 内在性レトロウイルス / メラノーマ / 腫瘍マーカー / イヌ / がん治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類ゲノムには、内在性レトロウイルス(ERV)の配列が存在する。ERV発現はエピジェネティック制御により抑制されているが、腫瘍細胞では活性化する。特にメラノーマにおいては、ヒトやマウスでの先行研究により、培養上清や血液からERV由来のRNAやタンパク質が検出されることが報告されている。一方で、腫瘍特異的な高精度の診断マーカーとしてのERVのポテンシャルは、非モデル生物では検証が進んでいない。本研究課題では、イヌメラノーマに着目し、独自の先進的ERVデータベースを使用することで、ERVの網羅的解析を実施し、ERVを標的とした新規診断法の開発とその獣医臨床への応用検討を行う。 イヌ8頭のメラノーマ臨床サンプルのRNA-seqデータに対して、ERVのデータベースであるgEVE version 1.1を用いた発現解析を行った。その結果、機能未知のenv遺伝子が同定された。このenv遺伝子は食肉目ゲノム特異的にみられ、全体として負の選択圧を受けており生存に必要な機能を担っていると推測される。 イヌメラノーマ細胞を培養し、このenv遺伝子が発現していることをRT-qPCRで確認した。発現プラスミドにタグを付けたenv遺伝子をクローニングし、イヌ由来培養細胞で一過性発現させた上で、イムノブロットによりタンパク質の発現を確認した。その結果、細胞外分泌タンパク質であること、PNGase Fによる糖鎖分解で分子量が変化することから、糖鎖修飾を受けていることが確認された。 また、上記遺伝子以外にも、断片的なアミノ酸をコードする複数のERV由来転写物をイヌメラノーマのトランスクリプトームから同定した。これらの転写物は、ノンコーティングRNAとして機能しているのか、機能をもたない単なる副産物なのかは定かではないが、診断マーカーとして有用である可能性があり、今後メラノーマにおける発現特異性を検証していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究で新規に同定したenv遺伝子をクローニングし、envのタンパク質を培養細胞上で機能評価するための系を確立できた。今回確認された細胞外分泌タンパク質としての性質は、血中から検出できれば診断マーカーとして活用できる可能性を示す有用な性質である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、env遺伝子に対する抗体を作製し、イヌの臨床サンプルや血中からの検出を検討する。さらに、病状の進行との相関について調べる。また、培養細胞を用いた実験により、このenvの機能についてさらなる解析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
初年度必要だったRNAseq解析が共同研究者のデータを使用できることとなったため、その分の経費が浮いた。新型コロナウイルスの影響により、打ち合わせがリモートで行うことになり、その分の旅費が浮いた。浮いた経費は実験に費用な試薬に使用した。本年度はin silicoのデータ解析をメインに行い、実験は令和3年度にまとめて行うこととし、効率化をはかった。そのため、令和3年度の物品費を当初計画よりも増額している。
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