2021 Fiscal Year Research-status Report
全ゲノム情報を用いたヤギの起源と伝播、環境適応形質の包括的解明に向けた先駆的研究
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19K22367
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
万年 英之 神戸大学, 農学研究科, 教授 (20263395)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹崎 晋史 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (50457115)
米澤 隆弘 東京農業大学, 農学部, 准教授 (90508566)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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Keywords | ヤギ / ミトコンドリアDNA / Y染色体由来マーカー / 高密度SNPアレイ / 遺伝的多様性 / 環境適応形質遺伝子 / 伝播 / 起源 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、世界規模で収集されたヤギのDNA試料に対し、全ゲノム解析を用いた大規模DNA情報解析を利用した起源・伝播経路の解明と環境適応形質遺伝子の全貌解明を着想し、その足掛かりとなる包括的研究を実施することを目的とした。 本年度は、mtDNAの東アジアにおける頻度分布調査とmtDNA全塩基配列決定による解析(ミトゲノム解析)、高密度SNP解析を中心に研究を進め、概ねの解析は終了した。その結果として、1) ハプログループBはパキスタン以東で高頻度に観察された。これは、ハプログループBが他のハプログループと異なる起源地を持つという先行研究を支持する結果となった。2) 12個体の東南アジア在来ヤギのミトゲノム配列の増幅に成功し、12のハプロタイプが観察された。さらにミトゲノムを使用した先行研究の配列データを用いてベイズ系統樹を作成した結果、B1が11個体、B2が1個体得られた。次に得られた系統樹を用いて、ベイズ法と最尤法で年代推定を行った結果、サブハプログループB1とB2の分岐年代は30,1600~307,700年前と推定された。3) 高密度SNP解析として、19 集団1,472 個体を本研究のデータとして使用し、14集団732個体 39,020 SNPを用いた解析を行った。系統解析からは地理的に近い集団がまとまって確認される地理的位置関係に即した結果が得られた。遺伝構造解析より、フィリピンでは東南アジア及び南アジア集団の中で唯一、スイスで優勢な遺伝的要素が確認された。また、フィリピン集団はスイスおよび南アフリカ共和国との遺伝的類似性が示唆される結果となった。一方、インドネシアでは父系統解析によりスイス・南アフリカ共和国方面からの遺伝子流入が推定されたが、核ゲノムSNP解析ではそれら地域との遺伝混合は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、世界規模で収集されたヤギのDNA試料に対し、全ゲノム解析を用いた大規模DNA情報解析を利用した起源・伝播経路の解明を目的の一つとしている。本年度は、mtDNAの東アジアにおける頻度分布調査とmtDNA全塩基配列決定による解析(ミトゲノム解析)、高密度SNP解析を中心に研究を進め、概ねの解析は終了した。 その進捗状況として、1) mtDNAの世界頻度分布解析は終了し、ハプログループBが他のハプログループと異なる起源地を持つという先行研究を支持する結果となった。2)12個体のミトゲノム配列の決定に成功し、ハプロタイプ数、多様性指数、分岐年代推定などの研究は終了している。一方で、より正確な分岐年代推定や伝播経路、東南アジアへの伝播年代を推定するには数百個体レベルでのミトゲノム解析が必要であることが明らかとなった。3) 高密度SNP解析では、19 集団1,472 個体の解析が終了し、系統解析、遺伝構造解析などが終了している。この結果から、東南アジア諸島部には中世以降の遺伝子流入があることを明らかにした。 ・これらの結果は、第22回日本動物遺伝育種学会大会(2021年11月)において2課題の発表を行っている。またAnimal Science Journalに1報原著論文を報告した。したがって、本年度の研究進捗状況としては概ね順調に進展していると判断したが、数百個体でのミトゲノム解析が終了できなかった。この理由としては、コロナ禍に伴い、大量ミトゲノム解析に必要なREPTIDE試薬を提供している海外メーカーの吸収が行われ、しばらくの間試薬が提供されなかったためである。2022年度より新企業から同様の試薬が販売されるとの情報を得ているので、それを用いた解析を進めて本課題研究を終了させたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は2021年度が終了年度であったが、上記の理由により数百個体でのミトゲノム解析が終了できなかった。 2021年度では、LA-PCRのプライマーを設定、12個体の東南アジア在来ヤギのミトゲノム配列の増幅、12のハプロタイプの同定に成功している。この配列を用いた系統解析からは、B1が11個体、B2が1個体得られベイズ法と最尤法で年代推定を行った。その結果、サブハプログループB1とB2の分岐年代は30,1600~307,700年前と推定された。今後、解析個体を増やすことにより正確に年代推定を行え、ハプログループBを有する在来ヤギの伝播経路がより正確に推定できると考えられた。 したがって2022年度は、400個体程度の東南アジアヤギに対するミトゲノム解析を行い、より正確な分岐年代推定や伝播経路、東南アジアへの伝播年代を推定することとする。得られたすべてのDNAデータを用い、特に東南アジア在来ヤギに特異的に見られる遺伝構造に着目し、アジア在来ヤギの起源と伝播について考察を行うことにする。
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Causes of Carryover |
2021年度では予定していた数百個体でのミトゲノム解析が終了できなかった。この理由としては、コロナ禍に伴い、大量ミトゲノム解析に必要なREPTIDE試薬を提供している海外メーカーの吸収が行われ、しばらくの間試薬が提供されなかったためである。2022年度より新企業から同様の試薬が販売されるとの情報を得ているので、2022年度はその解析が可能と考え、また持越し費用はこの試薬購入に計上する予定としている。
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Research Products
(5 results)