2021 Fiscal Year Annual Research Report
基質の性状とそれに制御されるmiRNAを用いた統合的な卵子胚培養システムの開発
Project/Area Number |
19K22372
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
岩田 尚孝 東京農業大学, 農学部, 教授 (50385499)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 多糖ゲル / 卵子発育 / 胚発生 / Focal Adhesion / アクチン重合 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、卵巣卵胞から得た卵子から胚盤胞を効率よく発生させることができる。この技術は家畜の生産から人の生殖医療に広く使われているが体外発育した卵や胚の質は低いこと、さらに受胎率が低いことが明らかになっている。体内と体外の環境の差を比べると体内では軟質の粘液の中で卵子や胚の発育が行われる。申請者はこの差に着目して、安全な多糖類を用いて軟質な培養基質を構築した。Xanthan gumとLocust Bean Gumは発酵・植物由来の多糖でこれらは食べ物の増粘材に用いられている。これらで作成したゲル上で胚発育を行うと良質な胚を得ることができ、細胞骨格特に重合アクチン量が有意に多くなることがわかった。この胚では、Hippo-Yapといった細胞骨格を基点とするシグナルが活性化していた。さらに、このゲルを初期胞状卵胞由来の卵子の体外発育に応用すると卵子の体外発育を促進し、卵子の受精能力も有意に改善していた。顆粒層細胞の遺伝子発現解析では、軟質の基質上でも、細胞の接着やアクチン重合とそれに伴うHippo-Yapを含むシグナルカスケードが亢進していることが明らかになった。卵子の体外成熟に対してこれを応用すると胚と同様に卵子のアクチン重合が増え、卵子の脂質含量が増え、受精後の発生率が有意に高くなった。これらのことから多糖類で合成された基質基質は卵子発育から胚発生の工程全てに利用でき、その質を大きく改善することができることが明らかになった。ゲル上で培養した顆粒層細胞のsmall RNA-Seqからゲル上で発現上昇するmiRNAを複数同定した。このmiRNAの対象遺伝子が関連付けられる筆頭Pathwaysにはアクチン制御やHippo、TGFB1-signalingがあり、細胞の反応にmiRNAが関与していることが示唆された。
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