2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K22375
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
千葉 由佳子 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (70509546)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 上流ORF / 概日時計 / シロイヌナズナ / 翻訳制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの生物は概日時計を持ち,概ね24時間の周期で様々な生命現象を制御している。植物では開花,気孔の開閉,茎葉の伸長,光合成の活性化などの重要な制御に関わる。シロイヌナズナの概日時計は,転写因子群からなる中心振動体とそれに付随する多数の複雑なフィードバックループ制御から成る。ここ数年の研究の進歩により,時計遺伝子のロバストな発現には様々な段階の転写後調節が重要であることが明らかとなってきているが,その全貌は未だ明らかとなっていない。本研究ではシロイヌナズナの時計遺伝子LHYに見つかった,上流ORF (uORF) におけるリボソーム停滞を介した時間依存的な翻訳制御に関して,その分子メカニズムと生理学的意義を明らかにすることを目指している。LHY mRNAの5’-UTRには5つのuORFが存在する。複数のuORFをもつ場合,相乗的にmain ORFの翻訳を制御する例が多い。本年度は,5つのuORFすべてにおいて開始コドンに変異を入れたLHY 5’-UTRとレポーター遺伝子の融合遺伝子を恒常的プロモーター制御下においたコンストラクトを作成した。タバコ葉およびシロイヌナズナのプロトプラストを用いた一過的発現系を用いて発現解析をおこなったところ,野生型uORFによる発現抑制が変異型uORFでは弱まることが確認できた。これらのコンストラクトをもつシロイヌナズナの形質転換体の構築を進める一方で,この発現抑制制御の生理学的意義に迫るために,野生型と変異型のそれぞれのuORFを持つゲノミッククローンの作成を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はコロナ渦のため研究に費やす時間を著しく制限されたことが,研究が遅れた最大の要因である。そのような中でも,LHY遺伝子がもつすべてのuORFに変異を入れると下流の遺伝子の発現抑制が弱まることを示すことができたのは,本研究において大きな進展といえる。また,生理学的意義を理解するために必要な,野生型と変異型のそれぞれのuORFを持つゲノミッククローンの作成も完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は作成したゲノミッククローンをlhyノックアウト変異株に導入し,その形質転換体を用いて,LHY mRNAやタンパク質の発現パターンの比較や概日時計の周期解析により,LHY uORFによる翻訳抑制制御の生理学的意義を明らかにする。また,LHY遺伝子に見られたuORFを介した翻訳制御の汎用性を理解するために,この研究の発端となったRibo-seqをタイムポイントを増やして実施する。
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Causes of Carryover |
現在までの進捗状況に示したように,本年度はコロナ渦のため研究に費やす時間を著しく制限されたため,研究に遅れが生じ研究費の繰越を必要とする事態となった。今後は,野生型と変異型のそれぞれのuORFを持つゲノミッククローンを導入した形質転換体を用いて,表現型観察を進める。また,LHY遺伝子に見られたuORFを介した翻訳制御の汎用性を理解するための網羅解析を行う。
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