2020 Fiscal Year Research-status Report
新規光誘導型デグロンを用いた生命機能操作技術の創出
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19K22378
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
深谷 雄志 東京大学, 定量生命科学研究所, 講師 (00786163)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | オプトジェネティクス / ショウジョウバエ初期胚 / 転写制御 / ゲノム構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
青色光の照射依存的に多量体形成を誘導するCRY2システムを用いた核内因子の阻害システムについて実験的検証を行った。ショウジョウバエ初期胚で働くモルフォゲンであるBicoidのC末端領域へのCRY2タグ付与によって、光依存的な活性制御が可能であるという知見に基づき、他の核内因子を標的としたゲノム編集を行った。具体的にはパイオニア転写因子であるZelda、ゲノム構造化因子であるCTCF、コヒーシン制御因子であるWaplおよびNipblを標的として、内在タンパク質のC末端にCRY2を融合したゲノム編集個体を作出した。光照射後の初期胚を用いてin situハイブリダイゼーション解析や胚発生異常の有無について検証したところ、Bicoid-CRY2で見られたような光依存的な阻害作用は見られなかった。つまりCRY2システムによる核内因子の制御効率は、標的タンパク質の種類によって大きく異なることが明らかとなった。
そこで次に、別の光依存的なタンパク質制御法について検証を行った。ごく最近、カリフォルニア工科大学の研究グループから、BLIDと呼ばれる青色光依存的なデグロンシステムが報告された(Irizarry et al., Genes Dev 2020)。LOV2ドメインとデグロン配列を融合したタンパク質配列を標的因子のC末端領域に付与することで、光依存的な分解を誘導することができる。Bicoidをモデルにゲノム編集を行い本技術の有効性について検証を行ったところ、光を照射していないコントロール胚においてもシグナルが検出できないレベルにまで低下していた。つまり、LOV2ドメインを介したデグロン機能の操作が、想定した通りに機能していない可能性が考えられる。現在、BILIDシステムの有効性についてCTCFやSu(HW)など他の核内因子を標的としたさらなる検証を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの解析結果から、標的とするタンパク質因子ごとに最も適切な光制御システムによる操作技術を採用する必要性があることが明らかとなった。つまりCTCFなどのゲノム構造化因子を操作したい場合、CRY2以外のシステムの構築が必要であるという明確な今後の指針を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在進めているBLIDシステムの有効性について、CTCFやSu(HW)に加え他の核内因子についてもゲノム編集によるショウジョウバエ系統の作出と実験的検証を行い、光操作可能かどうかについて明確な結論を導く。光操作法が確立された因子については、in situハイブリダイゼーションやMS2/MCPライブイメージングなどによって、転写制御に対する機能的な影響を詳細に明らかにしていく。Bicoidの標的遺伝子であるhunchbackなどの分節遺伝子にMS2配列を挿入した独自のライブイメージング系統について、既に作成を完了している(Fukaya , Curr Biol 2021)。MCP-mCherry系統を新たに作製し、Bicoid-CRY2系統と掛け合わせた新たなショウジョウバエを用いて、MS2配列を持つ内在遺伝子の転写活性を共焦点顕微鏡によってライブ計測する。「転写バースト」と呼ばれる転写活性の揺らぎの変化を指標として、Bicoidがどのような制御パラメーターに影響を与えているのかについて、定量画像解析による詳細な検証を行う。ゲノム構造化因子の光制御システムが確立された場合は、同様の遺伝学的操作を行い、転写のアウトプットに及ぼす影響について解析を進める。
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Causes of Carryover |
本年度についてもは実験系の構築と条件検討に注力して研究をすすめたため、当初の計画よりも実際の使用額は下回った。またコロナウイルスによる社会情勢の変化により、学会の現地参加などの予定を取りやめざるを得なかった。次年度の解析に用いる経費として有効活用する。また成果発表に関わる旅費や、論文出版費用として使用することを計画している。
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