2019 Fiscal Year Research-status Report
『細胞分裂依存バーコードによる細胞分裂数計測・全系統樹トレーシング』技術の開発
Project/Area Number |
19K22380
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 洋介 東京大学, 医科学研究所, 助教 (10509087)
|
Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
|
Keywords | DNAバーコード / Cas9 / Cre-loxP |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、細胞分裂ごとにDNAバーコードに変異を加えるシステムの開発を行った。このシステムには「反応が連鎖的に進行するシステム」の開発と、「その反応の連鎖を細胞周期に1回生じるように調節するシステム」の開発、「反応の進行に伴いランダム配列を生じるバーコード」の開発が必要である。今回の研究においては、「反応が連鎖的に進行するシステム」の開発に成功した。他のシステムについては開発中である。 具体的には、変異を加えることにより一度不活性化したsgRNA及びloxP配列をnCas9-CDAによる遺伝子編集技術を用いて修復することで再活性化する反応の開発を行った。再活性化したsgRNAにより次の不活性型sgRNAを修復できるように複数不活性型のsgRNAを準備することで反応の連鎖が可能になる。nCas9-CDAはsgRNAにより指定された目的の配列上のCをTに1塩基置換が可能である。sgRNA、loxPをそれぞれ不活性化するために様々な変異を酵母を用いたスクリーニングにより検討し、不活性型sgRNA、loxP変異体の作成に成功した。sgRNAについては不活性型sgRNAをnCas9-CDAによる1塩基置換により修復することで再活性化する反応の連鎖に成功した。 反応の連鎖は達成されたため、今後は細胞周期依存的に反応を制御するシステムの開発を引き続き行う。細胞周期依存的にタンパク分解を誘導するデグロンを用いる方法を検討している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
CをTに1塩基置換が可能であるnCas9-CDAを用いて修復可能な不活性型sgRNAを得るために、sgRNAの構造内のCをTに変異させた変異体sgRNAのスクリーニングを行った。酵母を用いたスクリーニングにより変異体sgRNAの中より不活性型sgRNAを得た。しかしながら酵母でスクリーニングした変異体sgRNAはヒト細胞では活性が保たれていたため、さらにもう1塩基変異を挿入することで不活性化sgRNAを得ることができた。そのため2塩基変異が挿入された不活性化sgRNAを1塩基変異に修復することで再活性化する反応を検討することにした。 nCas9-CDAがCをTに変換するには、その下流18bpにPAM配列(NGG)が必要である。しかしながら、野生型sgRNAにPAM配列を挿入するとsgRNAの機能が低下した。そのためPAM配列を挿入により機能が低下しないsgRNAを検討した。sgRNAの構造内ではStem loopといわれる構造は改変によりsgRNAの機能が低下しないことが知られている。このStem loopを延長し、その内部にPAM配列を挿入したsgRNA(Optimized PAM sgRNA)は機能の低下がみられなかった。Optimized PAM sgRNAへ上記の2塩基変異を導入すると不活性化し、1塩基変異では活性は保たれた。また、この不活性型Optimized PAM sgRNAはnCas9-CDAを用いて修復することで再活性化が可能であることを示した。 loxPについても同様に構造内のCをTに変異させた変異体sgRNAのスクリーニングを行った。それによりloxPは2つの相同反復配列を有するが、その両方に2塩基ずつ変異を加えることにより不活性化できることが分かり、不活性化loxPを得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
反応の連鎖は達成されたため、今後は細胞周期依存的に反応を制御するシステムの開発を行う。細胞周期依存的にタンパク分解を誘導するデグロンを用いる方法を検討している。このデグロンとnCas9-CDAの融合タンパクを作成し、細胞周期依存的なsgRNAの修復を行う。これまでに5’末端または3’末端にデグロンを融合したnCas9-CDAの検討を行ったが、これらの融合タンパクでは細胞周期依存的な制御が困難であった。そのため今後はデグロンを複数個導入することで制御が可能であるかを検討する予定である。その他の方法としてM期における核膜崩壊を利用する方法も検討する予定である。nCas9-CDAの核内移行シグナルを欠失させることによりG0/G1/S/G2期では修復反応が起こらないようにすることで、M期のみで修復を可能にする方法である。 次にDNAバーコードの開発を行う。系譜解析に反応の進行に伴い、ランダム配列が生み出されるDNAバーコードが必要である。しかしながらnCas9-CDAはPAM配列の上流18bpのCをTに変換する酵素で、この酵素による塩基置換ではランダム配列の作成が困難である。そのため2つの方法で反応の進行に伴い、ランダム配列が生み出されるDNAバーコードの開発を行う。1つ目はsgRNAの配列を複数個準備する方法である。nCas9-CDAによる修復効率は100%ではないので、修復のパターンによりランダム配列を得ることができる。2つ目はことなるPAM配列を認識するCas9を用いる。異なるPAM配列を認識するCas9をnCas9-CDAとは別に導入することで、Cas9による2重鎖切断後のエンドヌクレアーゼによる消化によりランダム配列を得ることが可能である。 すべての系が完成した際には実際にヒト細胞に導入し、実際の系譜とDNAバーコードによる系譜が可能であるかの確認を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
初年度に予定していた研究が遅れているため。次年度には、初年度の末から行う予定であった次世代シーケンスによるDNAバーコード解析を数回行う。
|