2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K22384
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
成田 哲博 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (30360613)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 電子顕微鏡 / 蛋白質動態 / 溶液構造 / パルス電子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、パルス電子顕微鏡で蛋白質動態を観察するための溶液チャンバーの開発を行った。電子顕微鏡で非凍結溶液観察を行うためには、ブラウン運動によるぶれを抑えなくてはならない。現在開発中の、1ミリ秒以下のパルスで一枚の写真が撮影できる半導体フォトカソード型パルス電子顕微鏡を用いれば、それが可能になる。しかし、パルス電子顕微鏡だけではだめで、真空の電子顕微鏡カラム中で非凍結溶液を保持できる溶液チャンバーが必要である。従来のものは窓厚が厚すぎてコントラストが出なかったり、高価すぎたりしており、扱いが容易で安価な溶液チャンバーの開発を行った。本研究では、NTT-ATに穴の開いたシリコンの上に40 nmのSiN(窒化シリコン)膜を貼り付けたチップの作成を依頼。このチップを二枚貼り合わせることで、溶液ホルダを自作した。接着材のスクリーニング、溶液厚さを貼り合わせ時の重りの重さでコントロールするなどの工夫を経て、直径20 nmの金コロイドの溶液中の動きを、(パルス電子顕微鏡ではない)通常の熱電子放出型電子顕微鏡でコンスタントに観察できるほどのコントラストを得ることができた。市販の溶液チャンバーとの比較から、溶液薄さは100 nmを割っているようで、溶液観察の成功率も50%を越え、ほぼ実用レベルに達している。蛋白質に金コロイドをラベルした試料の観察も開始している。一方で、金コロイドと窒化シリコン膜の間に吸着が観察され、安定した動きの観察には500mM以上の高イオン強度が必要であることは問題である。 今後は、吸着を抑えるために窓材の変更、表面処理の変更を試す。さらに、これを用いて、実用的な第二世代パルス電子顕微鏡立ち上げ終了次第、蛋白質の動態を直接観察する予定である。
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