2019 Fiscal Year Research-status Report
内在性DNA損傷修復活性を利用した新規ミトコンドリアゲノム編集技術の開発
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19K22391
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鈴木 啓一郎 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (70433654)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | ゲノム編集 / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
エネルギー産生の場であり細胞の生存や恒常性の維持にとって必要不可欠な細胞小器官「ミトコンドリア」内には独自のゲノムDNAが存在し、「ミトコンドリアDNA (mtDNA)」と呼ばれる。mtDNA内に生じた突然変異はミトコンドリアの機能障害を誘発し、老化・がん・疾患など生命活動の維持にとって多大な悪影響をもたらす事が知られている。しかしながら、既存の遺伝子操作法『ゲノム編集技術』は、細胞核内に存在する核ゲノムを操作するために特化した技術であり、mtDNA配列を自由自在に改変する遺伝子操作技術は未だ開発されていない。 本研究課題では、これまでの様々な核ゲノム改変技術の開発から得られた研究代表者の知見を生かし、mtDNAを容易に改変できる全く新しい『ミトコンドリアゲノム編集技術』の創出を目指すといった挑戦的な研究目標を設定した。 本年度は、mtDNAを人工ヌクレアーゼであるmitoTALENで部位特異的に切断し、ゲノム編集の責任因子であるDNA修復活性 (相同組換え・非相同末端結合・マイクロホモロジー媒介末端結合)を利用した遺伝子組み込み効率の高い方法を比較した。また、ミトコンドリア内に外来ドナーDNAを導入する既存の方法 (mitoAAV, DQAsomeなど) 及びミトコンドリアのエネルギー産生活性の異なる細胞種も複数比較・検討した。その結果、ヒト培養神経細胞内で相同組換え方法を用い、mtDNAの遺伝子改変に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、mtDNAを容易に改変できる全く新しい『ミトコンドリアゲノム編集技術』の創出の基盤技術開発を目指すため、様々な細胞種及び遺伝子組み換え法を比較検討したが、その結果、ヒト培養神経細胞内で相同組換え方法を用い、mtDNAの遺伝子改変に成功した段階にある。つまりミトコンドリアゲノム編集の基盤技術の開発に成功しため、当初掲げた目標を達成したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までに、ヒト培養神経細胞内で相同組換え方法を用い、mtDNAのゲノム編集に成功したが、現状では、応用可能な細胞種が限定的であり、ゲノム編集効率も低いことが明らかになってきた。今後は、原理的観点から、ミトコンドリアゲノム編集技術の改良を目指し、汎用性の高い技術とする。 さらに、開発したミトコンドリアゲノム改変技術を用いて、疾患や老化に関わる事が予想される変異をmtDNAに挿入する事で、ミトコンドリア病・老化のモデル細胞の作製を試み、mtDNAの変異が及ぼす細胞の恒常性の破綻機構の解明を目指す。
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Causes of Carryover |
本年度は、雇用予定だった技術補佐員に適人者が見つからず、代わりに設備投資(サーモフィッシャー社MaxQ6000スタッカブルインキュベーション 1,149,120円; フナコシ社 UVクロスリンカー 327,996円) を含めた物品費を多めに計上し、研究の推進を図った。当初と異なる使用計画となったため、次年度使用額が生じた。生じた当該助成金 (46,670円)は、次年度の物品費に計上する。
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