2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K22393
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加納 純子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (10323809)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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Keywords | ヒト科生物 / 進化 / 大型類人猿 / サブテロメア |
Outline of Annual Research Achievements |
サブテロメアは、染色体末端のテロメアに隣接するドメインであり、テロメアの繰り返し配列とは異なるDNA配列を持ち、各生物種のサブテロメア間で相同性が非常に高く長大な共通ブロック配列を含んでいる。チンパンジー、ボノボ、ゴリラ、オランウータンが属する大型類人猿とヒトの共通の遺伝子DNA配列の違いはわずか数%程度に見積もられている。しかし、それは両者のゲノムにおいて比較可能な領域のみでの話である。実は、チンパンジー、ボノボ、ゴリラでは、テロメアとサブテロメアの間に32塩基を単位とする長大な繰り返し配列 (StSat配列) が存在するが、ヒトには全く存在しない。そこで本研究では、大型類人猿のStSat配列の機能解析を通じて、サブテロメア領域のDNA組換えと遺伝子発現という二つ側面から、ヒトをヒトたらしめているものは何か?という生物の根本的な謎を解くための手がかりを得ることに挑戦している。まず、StSat領域のクロマチン状態を調べたところ、セントロメアと非常によく似たヒストン修飾が検出され、ヘテロクロマチン構造をとっていることがわかった。さらに、チンパンジー細胞におけるStSat領域近傍のサブテロメア遺伝子発現を解析したところ、ヒトにおけるサブテロメアホモログ遺伝子の発現より抑制されていた。このことから、チンパンジーではStSat配列近傍の遺伝子発現がStSatのクロマチン構造の影響によって抑制されている可能性が示唆された。一方、チンパンジーゲノムデータベースを用いて、まだほとんど未同定のサブテロメア構造の解明に取り組んでいる。その結果、チンパンジーのサブテロメア配列はヒトと同様に共通ブロック配列を含むものの、明らかにヒトとは異なる配列や構成が見られることから、両者のサブテロメア配列は進化の過程で大きく変化したことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
StSatの構造や周辺の遺伝子発現の影響が検出できた。さらに、チンパンジーのサブテロメアDNA配列についても解析を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、StSat配列が近傍の組換え反応に及ぼす影響についても解析を進める。さらに、StSat配列を他のゲノム領域に挿入し、周辺にどのような影響が出るかを調べる。
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Causes of Carryover |
当該年度に参加予定であった国際会議がすべてキャンセルとなり、さらに国内学会についてもオンライン学会となったため、かなり予定が変更となった。さらに、当初予定していた実験(次世代シークエンス解析など)の遅れが出たため、次年度に持ち越すことになった。
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Research Products
(5 results)