2020 Fiscal Year Annual Research Report
新しい膜蛋白質含有ナノ粒子の構築と蛋白質膜組過程の精密探査
Project/Area Number |
19K22395
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
塚崎 智也 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (80436716)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 膜タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質の動態をより詳細に解析するためには,これらの静止状態の構造だけでなく1ユニット(反応最小単位)での動的な解析が欠かせない。膜タンパク質は細胞膜に存在し,シグナル伝達,エネルギー変換,イオンやタンパク質の輸送といった細胞内の重要な機能を担っている。膜タンパク質の機能や構造は,脂質二重膜中に存在することで維持され,膜タンパク質が構造変化することでこれらの機能を発揮する。膜タンパク質の機能を明らかにするためには,脂質二重膜中で膜タンパク質の構造変化を観察する必要がある。従来法(例:細胞膜の状態;リポソーム再構成;平面膜再構成など)では,膜の占める領域が広く,膜の流動性なども問題となり,詳細な解析の妨げとなっている。そこで,我々はナノディスクと呼ばれるリン脂質が膜骨格タンパク質などに囲まれたディスク状の脂質二重膜と高速原子間力顕微鏡(高速AFM)を用いて,膜タンパク質の構造変化を観察する系を構築した。高速AFMは高い時間分解能と空間分解能を持ち,タンパク質を支持基板に固定することでそのダイナミクスをリアルタイムで観察することができる。一方で,ナノディスクは膜タンパク質を細胞膜に近い環境で保持でき,膜タンパク質1分子を溶液中で扱うことを可能にする。典型的な膜タンパク質としてSecYEGなどをナノディスクに再構成し,支持基板に固定して高速AFMで観察したところ,ナノディスクと膜タンパク質の可溶性ドメインの構造を確認できた。本年度はSecタンパク質の変異体を用いて,機能発現中に大きく動くドメインがあることを明らかとした。昨年度に観察できたいくつかの反応中間体は,機能欠失変異体を用いた解析では中間体を形成できないことを示し,観察データの信頼性を大幅に向上させた。また,論文発表に向け質の高いデータ収集を進めた。
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