2019 Fiscal Year Research-status Report
不活性化Cas9によるゲノム不安定性誘導機構の解明とそれに基づく構造多型の操作
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19K22397
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊藤 隆司 九州大学, 医学研究院, 教授 (90201326)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | dCas9 / 複製フォーク / 組換え / 構造多型 |
Outline of Annual Research Achievements |
出芽酵母ゲノム中では、CUP1遺伝子を含む2-kbのユニットが十数回縦列に反復している。我々は、CUP1にdCas9をターゲットすると、CUP1のコピー数が減少することを見い出した。このゲノム不安定性誘導機構の解明を目的に実験を行い、以下の成果を得た。 1)dCas9によるCUP1のコピー数減少は、出芽酵母の増殖(DNA複製)に依存的であった。更に、複製中間体を検出するための2次元ゲル電気泳動を行ったところ、CUP1にターゲットしたdCas9が複製フォークの進行を阻害していることが示された。一方、Rad52フォーカス形成アッセイでは、明確な2本鎖切断を示すデータは得られなかった。 2)複製フォークおよびその障害の修復に関与する遺伝子の変異体を用いて、dCas9によるCUP1コピー数の変動を調べた。その結果、dCas9によるCUP1コピー数減少の誘導に対して、複製フォークタンパク質Ctf4とMrc1が抑制的に、組換えタンパク質Rad52とRad59が促進的に働くことが分かった。更に、Rad52の機能分離型アレルを用いた実験から、Rad52によるCUP1リピートの不安定化には、Rad51との相互作用は必要とされず、ssDNAやssDNA結合タンパク質RPAとの相互作用が重要であることが判明した。 3)ナノポアシーケンサーによる解析の結果、CUP1の集団平均コピー数の減少はCUP1アレイの短縮(反復回数の減少)によることが確認されると同時に、逆に伸長したアレイも出現することが分かった。伸長アレイの存在はコロニーPCRによっても確認された。 4)CUP1アレイよりもユニット間の配列均一性が低く、反復回数も5回と少ないENAアレイにおいても、dCas9によってENA1パラログのコピー数の減少が誘導され、その効果はヒストン脱アセチル化酵素阻害剤であるニコチンアミドによって増強された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画は順調に実施されており、期待通りおよび予想外の知見が得られつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
計画通りに研究を遂行するとともに、いくつかの予想外の知見についても検討を行う。
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Causes of Carryover |
雇用を予定していた技能補佐員が転出したが、適切な後任者が見つからなかったため、次年度使用額が生じた。次年度より大学院生が新たに本研究に参加することになったため、技能補佐員の雇用は行わず、次年度使用額は次年度分請求額と合わせて主として当該大学院生が使用する物品費に充てることによって、研究の加速に有効に活用する。
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Research Products
(2 results)