2019 Fiscal Year Research-status Report
XFELとマイクロ流体技術の融合によるモノオキシゲナーゼの新しい構造解析
Project/Area Number |
19K22403
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
杉本 宏 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学研究センター, 専任研究員 (90344043)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
真栄城 正寿 北海道大学, 工学研究院, 助教 (40744248)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | X線 |
Outline of Annual Research Achievements |
モノオキシゲナーゼ反応などを触媒するシトクロムP450ファミリーのタンパク質は、バクテリアからヒトまで存在し、ヘムを補欠因子として様々な基質を酸化して生命活動に必要な反応に関与する。これまでに多様な生物種からシトクロムP450が次々と発見されており、それらの結晶構造解析からは、ヘム鉄への分子状酸素の結合や鉄イオンの酸化還元状態の変化で誘起される構造変化によって基質位置が制御されていることが示唆されてきた。しかし、このような中間的な構造は不安定で短寿命な状態のため、構造変化を直接的に観測することは困難と考えられてきた。そこで、タンパク質の基質ポケットの動きを可視化し、触媒反応における動的な分子メカニズムを解明することを目的としてマイクロ流体技術とX線自由電子レーザー(XFEL)による構造解析データの収集手法の開発を進めた。活性中心の鉄イオンはX線の照射によって容易に還元されるため、無損傷のX線回折データを用いてタンパク質の構造解析をする必要がある。本年度は解析対象のタンパク質の微結晶の大量調製方法の確立のための条件探索を行った。既知の通常の結晶化に用いられてきた結晶化溶液の条件を基盤として沈殿剤濃度やpH条件を検討した。この実験では、マイクロシーディング法によって結晶の核形成を促すことで、時間分解X線回折実験に好ましい結晶のサイズや個数に最適化することができた。さらに、XFELの強力な短パルスで1万個以上のタンパク質の微結晶から回折イメージを1枚ずつ連続取得する手法を用いるため、マイクロ流体技術を用いて結晶を連続的にX線ビームの照射位置に運搬と固定を可能にするデバイスを設計と試作を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
X線回折実験に用いるタンパク質結晶は微小サイズのものを想定している。結晶中のすべての分子の反応を同期させるためには、小さくてサイズが揃った結晶を大量調整する必要がある。マイクロシード法による核形成の制御によって、約50-75ミクロンのサイズでの調整は再現よくできている。結晶化はPCR用の100マイクロリットル容量の汎用的な8連チューブを用いてバッチ法で行なっており、実際の構造解析に必要なX線回折実験のための試料調整として十分な容量スケールである。また、多数の結晶を流路内のウェルに固定できるようなデバイスの設計と試作を行い、デバイス内へ結晶を導入してX線回折実験に利用可能なことを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の方策を推進する計画である。1) 調製した微結晶をマイクロ流体デバイスへ効率的に導入できるような治具の作成を行う。2) 流路のデザインやウェルの配置などの最適化や表面コーティング方法の評価を行う。3) 反応のトリガーとなりうる光反応性の化合物の評価と励起用UVレーザーの導入方法について検討を行う。4) 微結晶の品質やデバイス内に導入された状態での結晶の評価を行うために、大型放射光施設でのX線回折実験を実施する。
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Causes of Carryover |
解析対象とする結晶の調整方法の検討は順調に進んでいるが、結晶内での反応励起方法の確立が予定よりも遅延していることと、放射光施設の利用状況が限られている状況であったため、次年度以降に機器の整備と反応条件の検討実験のために未使用予算を執行する予定である。
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[Journal Article] Crystals in minutes: instant on-site microcrystallisation of various flavours of the CYP102A1 (P450BM3) haem domain2020
Author(s)
Stanfield, J. K., Omura, K., Matsumoto, A., Kasai, C., Sugimoto, H., Shiro, Y., Watanabe, Y., Shoji, O.
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Journal Title
Angew. Chem. Int. Ed.
Volume: 59
Pages: 7611-7618
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Time-resolved studies of metalloproteins using X-ray free electron laser radiation at SACLA2019
Author(s)
Suga, M., Shimada, A., Akita, F., Shen, J. R., Tosha, T., Sugimoto, H.
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Journal Title
Biochim. Biophys. Acta Gen. Subj.
Volume: 1864
Pages: 129466
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] High-throughput structures of protein-ligand complexes at room temperature using serial femtosecond crystallography2019
Author(s)
T. Moreno-Chicano, A. Ebrahim, D. Axford, M. V. Appleby, J. H. Beale, AMoreno-Chicano, T., Ebrahim, A., Axford, D., Appleby, M. V., Beale, J. H., Chaplin, A. K., Duyvesteyn, H. M. E., Ghiladi, R. A., Owada, S., Sherrell, D. A., Strange, R. W., Sugimoto, H., Tono, K., Worrall, J. A. R., Owen, R. L., Hough, M. A.
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Journal Title
IUCrJ
Volume: 6
Pages: 1074
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Dose-resolved serial synchrotron and XFEL structures of radiation-sensitive metalloproteins2019
Author(s)
Ebrahim, A., Moreno-Chicano, T., Appleby, M. V., Chaplin, A. K., Beale, J. H., Sherrell, D. A., Duyvesteyn, H. M. E., Owada, S., Tono, K., Sugimoto, H., Strange, R. W., Worrall, J. A. R., Axford, D., Owen, R. L., Hough, M. A.
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Journal Title
IUCrJ
Volume: 6
Pages: 543
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research