2019 Fiscal Year Research-status Report
Genetic study to validate whether fairy chemicals are new plant hormone
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19K22412
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
岡本 昌憲 宇都宮大学, バイオサイエンス教育研究センター, 准教授 (50455333)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 生理活性物質 / 植物ホルモン / シロイヌナズナ / 遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
プリン代謝経路から生合成されるフェアリー化合物群は、もともとキノコが生産する化学物質によって植物の成長に影響を及ぼすものとして報告され、近年その実体が明らかにされた。フェアリー化合物の投与実験によりイネやコムギなどの成長促進や穀物の収量向上に影響をもたらすことが報告されてきた。さらに、分析機器の性能の向上に伴い、モデル植物のシロイヌナズナを含む多数の植物種の生体内で微量に含まれるフェアリー化合物の存在が確認されている。このような一連の報告を総合すると、フェアリー化合物が新たな植物ホルモンとしての条件を満たす要素を含んでいる。そこで、植物ホルモンとしての可能性があるかどうかを、分子生物学的手法の適用が容易であるシロイヌナズナを用いて検証する事とした。フェアリー化合物は、ICA、AICA, AHX, AOHの4種が知られており、これらに関してシロイヌナズナに対する生理活性の強さを評価した。その結果、フェアリー化合物の4種の中でAHX, AOHが比較的強い活性を示したが、暗所での胚軸や根の伸長阻害における半数阻害濃度(IC50値)は400uM以上と高く、これまで確立された植物ホルモンのnMから数uMオーダーで作用する生理活性と比べて非常に弱いことが判明した。また、低濃度領域におけるseedlingの胚軸や根の伸長作用も観察できなかった。しかし、この実験結果はシロイヌナズナの世界標準系統のColumbia系統にて得た結果である。Columbia系統以外に関しても、フェアリー化合物の効果が弱いかどうかを確かめるために、約300系統のシロイヌナズナにて、フェアリー化合物の効果を解析した結果、数uMの低濃度で暗所の胚軸や根の伸長阻害が起こる系統群を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
フェアリー化合物は、ICA、AICA, AHX, AOHの4種が知られており、これらに関してシロイヌナズナに対する生理活性の強さを世界標準系統のColumbia(Col)系統にて評価した。その結果、当初の実験ではフェアリー化合物の4種の全てに対して5uMという低濃度で種子発芽阻害効果の活性を確認した。この濃度は、これまで確立されてきた植物ホルモンと同等の低濃度で作用する驚くべき結果であったが、のちの詳細な実験により、フェアリー化合物を溶解している単なるエタノールの効果であった。そこで、溶媒をDMSOに変更して再度実験を行ったところ、フェアリー化合物の4種の中ではAHX, AOHが比較的強い活性を示したが、暗所での胚軸や根の伸長阻害における半数阻害濃度(IC50値)は400uM以上と高く、これまで確立された植物ホルモンのnMから数uMオーダーで作用する生理活性と比べて非常に弱いことが判明した。事前に準備していたCol系統のEMS変異集団種子での遺伝学的なスクリーニングも濃度が高いために現実的でないことが発覚した。そこで、打開策として、世界に分布する約300系統のシロイヌナズナにて、フェアリー化合物の効果を解析した結果、数uMの低濃度で暗所の胚軸や根の伸長阻害が起こる系統群を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
E185系統は、AHXに対して数uMという低濃度で胚軸や根の伸長阻害を示す。また、この系統は、開花に長期の春化処理の必要がなく、1世代サイクルもCol系統と比べて遜色が無いため、この系統を使って遺伝学的な解析を行うことにした。現在、EMS変異集団を作成しており、2020年度には、E185系統のEMS集団から変異株を単離して、M3種子における再現性を確認する。再現性が確認できた系統に関しては、E185系統にバッククロスして、F2におけるフェアリー化合物の感受性に対する分離比を明らかにして、遺伝学的な観点から変異形質が優性であるか劣性であるかを明確にする。さらに、変異株における様々な表現型を解析する事で、植物自身が生産するフェアリー化合物がどのように自身の成長制御に関わっているかを考察する。また、明確な形質を示す変異株においては、次世代シークエンスによる原因遺伝子の特定を試みる。
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Causes of Carryover |
実験の途中で予想外の結果を得ることになり、そのためにシロイヌナズナのEMS変異集団の遺伝学的解析が当初の予定よりずれ込んだ。しかしながら、実験計画内容を修正して、当初予定した実験に準ずる内容の研究に変更し、研究進展の遅れを挽回するために、2020年度の実験消耗品に当てる予定である。
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