2019 Fiscal Year Research-status Report
細胞外タンパク質品質管理システムの実証と研究基盤創出
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19K22413
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
板倉 英祐 千葉大学, 大学院理学研究院, 助教 (90754218)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 細胞外シャペロン / タンパク質分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞外、つまり血液には高濃度のタンパク質が存在する。細胞内と同様な熱ショックや酸化ストレスだけでなく、様々ンストレスに曝され、タンパク質にとって厳しい環境である。しかし血液内は低ATPレベルのためシャペロンによるrefoldingが期待できず、再折りたたみすることができない。実際に、アルツハイマー病、プリオン病、アミロイドーシス、2型糖尿病など、細胞外タンパク質沈着を伴う疾患が多くある一方で、細胞外の不良タンパク質を除去し細胞外タンパク質ホメオスタシスを保つ、細胞外タンパク質品質管理システムは解明されていない。 本研究では細胞外シャペロンClusterinに着目した細胞外タンパク質品質管理機構を探索した。細胞外タンパク質分解を検出すべく蛍光アッセイシステムを新規に構築し解析した。その結果、細胞外シャペロンClusterinが変性タンパク質を捉え、細胞内へ選択的取り込み分解していることを見出した。その分解機構に関わる細胞膜上受容体を遺伝子スクリーニングした結果、ヘパラン硫酸受容体を同定することに成功した。ヘパラン硫酸残基が直接Clusterinに結合をすること、静電相互作用によって直接結合することも明らかとした。さらに、Clusterin-変性タンパク質複合体の分解は、様々な哺乳類組織由来の細胞において一様にみられることから、普遍的な分解システムであり、Clusterinはアルツハイマー病の原因因子の一つである細胞外のアミロイドβとも結合し、分解を導くことも示唆された。これらの結果から、細胞外変性タンパク質はChaperone and receptor mediated extracellular protein degradation (CRED)経路によって選択的分解されることがわかった。この研究の進展は細胞外タンパク質品質管理システム研究基盤の土台となり、世界に先駆けた新規分野の確立が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CRISPRを用いた全遺伝子欠損スクリーニングと開発したClusterin蛍光取り込みアッセイを組み合わせることで、クリアランス受容体の同定を試みた。得られた因子群からタンパク質機能の分類を行うと、上位をヘパラン硫酸合成酵素が占めていることが判明した。そこでヘパラン硫酸が細胞表面受容体になっている可能性が高いと考え、ヘパラン硫酸とClusteirn複合体の結合実験、ヘパラン硫酸の競争阻害アッセイ、ヘパラン硫酸の硫酸基の必要性、Clusterinとの静電化結合の有無、静電化結合にはたらくアミノ酸残基の探索などを行った結果、Clusterinとヘパラン硫酸が直接結合することがわかった。計画通りクリアランス受容体としてヘパラン硫酸受容体の同定に成功したことで、次のステップに進み、詳細な分子機構の解析を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、Clusterin-変性タンパク質がなぜ選択的に分解されるのか、つまりClusterin単独では分解されず、複合体が分解される分子機構を明らかにすべく、受容体結合部位解析、他基質・他細胞外シャペロンと受容体の結合、受容体の生理的役割などの詳細を、生化学的・分子細胞学的実験を推し進め、詳細に解析する。
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Research Products
(10 results)