2020 Fiscal Year Research-status Report
タンパク質がオートファジーから逃れる機構:オートファジーエスケープの研究
Project/Area Number |
19K22419
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
神吉 智丈 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50398088)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | オートファジー / タンパク質分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
オートファジーは、オートファゴソームと呼ばれる膜構造体で細胞内のタンパク質やオルガネラを包み込んで、最終的にリソソームに運び込むことにより分解する機構である。オートファジー研究の黎明期には、オートファジーは非選択的に細胞質成分を分解していると考えられていたが、近年の研究により、オルガネラや一部のタンパク質はレセプターやユビキチン化を介して選択的に分解されていることが明らかになってきた。このことは、様々な細胞質成分が決して均一には分解されていないことを意味する。私達は、こうした背景から、オートファジーによって分解されにくい細胞質成分も存在するのではないかと考えている。本研究は、本当に分解されにくい(即ち分解を免れる)タンパク質があることを明らかにすることと、その分解を免れるメカニズムの解明を目指している。出芽酵母を用いて、幾つかのタンパク質にGFPを付加し、その分解を観察したところ、オルガネラに局在するタンパク質の多くが分解が遅れている事が明らかになってきた。分裂酵母でも同様の研究を行ったところ、同様に細胞質のタンパク質よりもオルガネラのタンパク質の方が、分解が遅れている事が明らかとなった。しかしながら、これまでの所、同一のオルガネラに局在するタンパク質で比較すると、タンパク質間に分解速度に大きな差は認めていない。細胞質のタンパク質で比較すると、多くのタンパク質が非常に早期に分解が開始されており、大きな差は認めていない。このことから、大部分のタンパク質では、そのタンパク質がオルガネラに局在するか、細胞質に局在するかが、分解される速度を決める要因となっていると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、オートファジーによって分解されにくいタンパク質を同定し、分解を免れているメカニズムを解明することを目的としている。細胞質やオルガネラに局在する様々なタンパク質に対してGFPを付加し、それらのタンパク質分解を見ることによって分解速度を検討することに成功しているが、オルガネラのタンパク質は総じて分解が遅れる結果となり、細胞質のタンパク質から優位に分解が遅くなる因子を見いだせていない。このことから、計画はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、細胞質のタンパク質は、オートファジーによって分解されるタイミングが早く、オルガネラのタンパク質は分解されるタイミングが遅いことが明らかになっている。令和3年度は、ミトコンドリアをオルガネラのモデルとして、ミトコンドリア内のタンパク質で、分解速度を比較し、同じミトコンドリア内に局在しながら、オートファジーで分解されやすいタンパク質と、分解されにくいタンパク質が有るかどうかについて検証する。また、細胞質のタンパク質に対しても同様に、オートファジーで分解されやすいタンパク質と、分解されにくいタンパク質が有るかどうかについて検証する。
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Causes of Carryover |
これまでの研究では、オートファジーによって細胞質のタンパク質とオルガネラのタンパク質の分解速度に大きな違いがあることを明らかにしてきたが、細胞質のタンパク質間で明らかに分解が遅いタンパク質の同定に至っていない。このため、分子機構を解明する研究に遅れが生じており、それに伴って次年度使用額が生じている。次年度には、さらなるスクリーニング実験が必要であり、そのために必要なDNA合成などに使用する計画である。
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Research Products
(9 results)