2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K22425
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
志賀 向子 大阪大学, 理学研究科, 教授 (90254383)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱中 良隆 大阪大学, 理学研究科, 助教 (10647572)
長谷部 政治 大阪大学, 理学研究科, 助教 (40802822)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 概日時計 / 概倍日リズム / 光周性 / 時計細胞 / PTTH |
Outline of Annual Research Achievements |
A (時計ネットワークの同定)ナミニクバエ:免疫組織化学により、PDFニューロンがPER陽性の時計ニューロンであることがわかった。ptth mRNAのin situ hybridization(ISH)と単一contralateral pars lateralis (PL-c)細胞内qPCR解析を行った。ISHではptth mRNAプローブによりPL-c細胞と似た位置に2対の細胞体が標識された。また、逆行性色素注入により標識したPL-c細胞を回収しqPCRを行ったところ、ptthの発現が見られた(N=2)。これより、ナミニクバエの幼虫においてPL-cニューロンがPTTHニューロンであることがわかった。 B (日数経過に伴う電気的性質および形態変化の探索)キイロショウジョウバエ:概日時計ニューロンの1つであるsmall lateral neuron ventral (sLNv) に着目し、sLNvの軸索終末部の構造が光周期によって変化するかSholl analysisを用いて調べた。羽化後3日にsLNvの軸索終末部の形態を4時間毎に比較した結果、明期開始後10時間において、長日よりも短日の分枝の複雑さが有意に低くなった。 C (シナプス構造阻害、時計遺伝子機能抑制の計数機構に対する影響の解析)ナミニクバエ:シナプス前部のシナプス活性領域の拡大とシナプス小胞の放出を抑制することが知られているスペルミジンを人工飼料に混ぜ(5mM)、光周性に対する影響を調べた。その結果、短日(12L12D)と長日(16L8D)で休眠率に差は見られなかった。オオクロコガネ:脳のRNA-seqを実施し、per, tim, clk, dbt, cry2, vri, shaggy, cwo8つの時計遺伝子の配列を得た。今後、これらの配列から二本鎖RNAを作製し、RNA干渉実験を実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ナミニクバエでは時計細胞と出力を担うPTTH細胞ネットワークが細胞レベルで同定できたが、オオクロコガネの時計細胞の同定が進んでいない。電気生理学実験については、ハエの脳の小ささなどからうまく記録法が確立できていないが、引き続き検討する。また、スペルミジン投与実験も現時点では効果は見らていない。今回、キイロショウジョウバエ時計細胞形態の動態に日長差がある可能性があり、これは次につながる成果となった。今後ナミニクバエにおいて日長および日数による差を調べる実験へつなげたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、昆虫の光周性と概倍日リズムを材料に、概日時計の計数機構を解くことを目的とし、今後以下の方策で研究を推進する。 A (時計ネットワークの同定)では、ナミニクバエについてはネットワークがほぼ同定できてきた。最後の一年で、PDF陽性細胞とは異なるDN細胞とPTTH細胞の位置関係を調べる。オオクロコガネにおいては、RNA-seqのデータを用いて、時計細胞のISHあるいは免疫組織化学を行い、神経ペプチドなどとの二重染色により、時計細胞の投射形態を調べる。B (日数経過に伴う電気的性質および形態変化の探索)では、キイロショウジョウバエで用いたSholl法をナミニクバエに適用し、PDFニューロンの分枝の複雑性が日長によりどのように変化するか調べる。時計細胞のネットワークが見えてきたことから、ここでどのような変化が起こっているかを突き止めたい。そのため、キイロショウジョウバエのPDF細胞、ナミニクバエのPTTH細胞の電気的記録を試みる。C (シナプス構造阻害、時計遺伝子機能抑制の計数機構に対する影響の解析)ナミニクバエにおけるスペルミジンの実験は濃度を高くして再度投与実験を行い、光周性への影響が見られないか確認する。オオクロコガネでは、RNA-seqの解析を進め、概倍日振動、概日振動する遺伝子を見つける。また、時計遺伝子がどのような周期で振動するか調べ、それらのRNA干渉実験へつなげる。
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Causes of Carryover |
COVID-19拡大のため、学会がオンラインとなり旅費が全く発生しなかったため。
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Research Products
(4 results)