2019 Fiscal Year Research-status Report
エコタイプの進化における植物免疫応答と成長のトレードオフレベルの最適化
Project/Area Number |
19K22430
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
柿本 辰男 大阪大学, 理学研究科, 教授 (70214260)
|
Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
|
Keywords | 植物 / 病原体応答 / 成長 / エコタイプ |
Outline of Annual Research Achievements |
植物は病原体を感知すると、まずは基本免疫機構を発動して対抗するが、この時、植物の成長も阻害される。基本免疫応答は広く微生物を認識できるが、同時に非特異的である。そのため、免疫応答と成長のトレードオフの適切な比率は生息環境に応じて適応進化している。本研究では、ゲノム配列も公開されている1135系統のシロイヌナズナエコタイプで基本免疫による成長抑制のレベルを調べる。エコタイプ進化の研究は多くされているが、免疫応答による成長抑制は多様性が大きく、かつ実験の再現性が高い。本研究により、最適な応答レベルにエコタイプが適応進化する際、免疫応答関連遺伝子にどのような変化を伴うのか、基本免疫による成長抑制レベルを規定する遺伝子がエコタイプとして定着するにはどのような条件が必要なのか、またそのような遺伝子型はどのように他の生息地に広がるのかについて遺伝子レベルで答えることを目的としている。本研究は主に2つの研究からなる。一つ目は基本免疫応答による成長阻害の程度が大きいLerと小さいColの二つの系統間でのrecombinant inbred 系統(RI系統)を用いて二つの系統間で成長抑制に違いを生みだす原因遺伝子を見出す研究である。二つ目は、世界の多くのエコタイプの免疫応答レベルを調べるものである。前者の研究においては、 原因遺伝子座をマッピングし、本年度には第5染色体250kbの領域に限定し、遺伝子がコードするタンパク質の特徴から最も可能性が高い遺伝子を選んで遺伝子導入することで相補性試験を行なったが、残念ながらポジティブな結果は得られなかった。後者の研究については、200以上のエコタイプについて基本免疫応答による成長抑制レベルを調べた。地理的にかなり近い範囲でも大きな違いが見出されている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多くのエコタイプの表現型を調べ、概ね計画通りに進んでいる。ただし、recombinant inbred系統を用いたLerとColの免疫応答による成長抑制の違いをもたらす遺伝子の特定は、当初予測よりも困難であることが明らかとなってきた。
|
Strategy for Future Research Activity |
recombinant inbred系統を用いたLerとColの免疫応答による成長抑制の違いをもたらす遺伝子の特定に関しては、配列上、原因として最も可能性が高かった遺伝子がネガティブである可能性が高い結果となり、また遺伝学的なマッピングの精度を上げることも困難であるので、染色体上の位置から考えて、可能性のある数十の遺伝子の機能解析を進める。また、多くのエコタイプを用いた研究については、さらに多くのエコタイプを用いて研究を進めるとともに、GWAS解析によって関連が見出されてきた領域にある遺伝子の多型を丁寧に調べる。
|
Causes of Carryover |
recombinant inbred系統を用いたLerとColの免疫応答による成長抑制の違いをもたらす遺伝子の特定に関しては、最も可能性が高かった遺伝子ではない可能性が高い結果となり、当該年度に予定していた研究に変更が生じ、2020年度に他の多くの原因遺伝子候補の解析が必要となった。
|
Research Products
(2 results)