2019 Fiscal Year Research-status Report
高温・乾燥地域での生育を可能にする植物の新規な蒸散制御システムの解明
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19K22438
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
金井 雅武 基礎生物学研究所, オルガネラ制御研究室, 特任助教 (30611488)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | ヒマ / 乾燥耐性 / 高温耐性 / 蒸散 / プロトプラスト |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒマは蒸散を迅速かつ厳密にコントロールすることで高温・乾燥地域においても高い生産性を示すと考えられる。ヒマ葉の気孔直下の海綿状組織には、他の植物には見られない特殊な細胞(バルブ細胞)が観察されており、このバルブ細胞の機能解析を進める。 バルブ細胞の機能に向け、ヒマ葉の細胞分画法を検討した。ヒマ葉から細胞の種類に偏りなくプロトプラストを調整するため、既報のTape-Arabidopsis Sandwich法を改変した。使用する葉の部位、表皮の前処理、表皮剥離に使用するテープの種類、細胞壁分解酵素の濃度および処理時間、回収した細胞の洗浄方法を検討し、ヒマ葉に最適化した。これより、従来法と比較して、損傷の少ないプロトプラストを大量に調製することができた。次に、ヒマ葉の細胞集団であるプロトプラストからバルブ細胞の分離を検討した。バルブ細胞は顕微鏡観察により見いだされ、他の細胞よりもサイズが大きいことを確認している。サイズの違いを利用し、25μm、50μm、100μmのナイロンメッシュを用いて細胞分画を行った。サイズの小さい細胞は25μm以下の画分に濃縮され、大きな細胞は25-50μmの画分に濃縮された。25-50μm画分の細胞は、50%程度がクロロフィル自家蛍光を持たない細胞であった。細胞サイズおよびクロロフィル自家蛍光を持たないことから、25-50μmの画分にはバルブ細胞と考えられる大きなサイズの細胞が濃縮されていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、C3植物でありながら極めて優れた高温・乾燥耐性を有するヒマの葉において見いだされたバルブ細胞の機能解析である。未知の細胞であるバルブ細胞の機能解析には、遺伝子発現およびタンパク質発現プロファイルを取得することが不可欠であり、多様な細胞集団である葉から、バルブ細胞を濃縮する必要がある。令和元年度はヒマ葉から効率的にプロトプラストを調整する方法を確立し、そのプロトプラストからバルブ細胞を分画することができた。さらに、確立した方法は他の植物においても利用可能であり、同一条件下で細胞分画を行うことができることから、他の植物との比較検討についても分画方法の違いがデータに与えるノイズを除くことができる。この成果により、以降の研究計画である遺伝子発現およびタンパク質発現プロファイルを行うことができる。本研究は、当初の計画に従って進行しているため、「(2)おおむね順調に進展している」と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、バルブ細胞の機能解析に向けた遺伝子発現、タンパク質発現プロファイルを取得することを目標にする。令和元年で確立された方法を用いて、ヒマや他の植物から葉のプロトプラストを調整する。調整したプロトプラストを細胞サイズで分画し、各サイズの画分を取得する。いくつかの代表的な遺伝子に対して定量PCR解析を行い、その結果を比較することでそれぞれの画分における特徴づけを行い、場合によってはさらに細かい分画を行う。調整されたプロトプラスト画分からRNAを抽出してRNA-seq解析を行い、バルブ細胞が持つ特徴や機能を遺伝子発現レベルで明らかにする。また、他の画分と比較することでバルブ細胞が持つ特徴的な代謝系等の情報を取得し、その機能の推定に役立てる。さらに、タンパク質プロファイルを取得し、遺伝子発現プロファイルと統合的に解析することでバルブ細胞の特徴や機能の全体像を明らかにする。
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Causes of Carryover |
本研究ではヒマやダイズを使用している。これらの植物はライフサイクルが長く、実験材料として使用する時期が限られている。令和元年度は不安定な気候からダイズの生育が遅れたため、ヒマと同時期のサンプリングが困難となった。そのため、令和元年度に予定していた遺伝子発現解析の予備試験の一部と、令和2年度に予定していた生化学的解析の予備試験の一部を入れ替えることで対応した。これにより次年度使用額が生じたが、実験項目の一部入れ替えであるため、全体の計画や進捗状況に変更はない。
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