2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K22442
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
小椋 俊彦 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 上級主任研究員 (70371028)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 条太郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (20585088)
|
Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
|
Keywords | 走査電子顕微鏡 / 赤外線 / 窒化シリコン / 金属薄膜層 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究提案では、薄膜に入射した走査電子線により放出される赤外線を用いた走査電子赤外線顕微鏡の開発を行う予定である。走査電子顕微鏡の内部は、真空であるため、耐圧性の高い薄膜により試料を封入することが必須となる。本提案の観察ホルダでは、溶液中の生物試料や有機材料を2枚の窒化シリコン薄膜で挟み込み密閉する。ホルダ上部の窒化シリコン薄膜には、金属薄膜層が形成されており、ここに集束した電子線を走査させながら入射させる。電子線照射位置では局所的な熱スポットが生じ、ここから赤外線が放出される。この赤外線を薄膜直下のサンプルを透過させた後に検出することで画像化を行う。本年度は、走査電子顕微鏡内に導入した赤外線センサーの高感度化と観察原理の検証を行った。モデルサンプルとして、窒化シリコン薄膜上にスーパーインクジェット装置により、金、銀、銅の微粒子を含むインクを塗布し、直径約10μmのスポットを形成し、赤外線顕微鏡システムにより観察を行った。その結果、材質の種類や厚さにより赤外線の強度が変化することを確認した。これは、金属の種類により電子線を照射した際に放出される赤外線の量が異なることを示唆している。さらに窒化シリコン薄膜の厚さや金属膜による影響等も観察画像より解析を進めており、本システムの観察メカニズムの解明が大きく進展した。さらに、観察した赤外線画像を高分解能化する超解像処理ルーチンの開発を行い、より高分解能での観察と分析を可能とした。以上のように本年度は、当初の目標をほぼ達成したものと考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、高感度かつ広帯域の赤外線検出システムを独自に開発し、赤外線による画像取得の原理検証をさらに進めた。また、観察原理の検証のためにスーパーインクジェットによるスポットパターンを形成し、より詳細な解析を行うことが出来た。そのため、当初の計画通りに、おおむね順調に進展しているものと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究提案の走査電子赤外線顕微鏡では、窒化シリコン薄膜上の金属層に電子線を照射し、局所的な熱スポットを生じさせ、ここから放出される赤外線を間接的に試料に照射し観察を行う。こうした熱による赤外線は、2~6μmの波長にブロードに広がっており、生物試料中のタンパク質や脂質等の有機物の種類により赤外線の吸収が大きく異なる。そのため、赤外線フィルターを用いて分光することで、複数の赤外線波長による画像を撮像し、スペクトル成分を分析することが可能となる。3年次では、赤外線センサーの高感度化と上部に赤外線フィルターを設置し、分光画像とスペクトル分析を同時に行えるよう開発を進める。赤外線フィルターとしては、小型で赤外線の透過波長を電圧により制御可能なファブリペロー干渉フィルターや複数の光学フィルターを形成した赤外線検出器を用いる予定である。現在、超小型のファブリペロー干渉フィルターが半導体プロセスにより実現されており、幾つかの企業から販売されている。また、これを内蔵した赤外線センサーもすでに市販されており、こうしたセンサーを購入し使用する予定である。この干渉フィルターは電圧を印加することで透過波長を制御するため、波長制御用の回路やシステムも同時に開発を行う。さらに、観察を行った分光画像からスペクトル成分を自動的に分析し、その組成を同定する解析処理アルゴリズムの開発も平行して行う。この開発には、情報処理・画像処理ソフトであるMatlabを活用することで、高度な情報処理システムを短期間に構築する予定である。本システムを用いて観察する試料としては、培養細胞の他に、抗体医薬等のタンパク質が溶解したサンプル、さらには有機ナノ材料を想定している。
|
Causes of Carryover |
昨年4月から6月までの緊急事態宣言により実験に使用するセンサーや部品の納入が遅れ、さらに実験等の遅延が生じたため。
|
Research Products
(4 results)