2020 Fiscal Year Research-status Report
菌類の種間競争と有機物分解の関係を炭素配分戦略からモデル化する
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19K22444
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
深澤 遊 東北大学, 農学研究科, 助教 (30594808)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上村 真由子 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (60444569)
井手 淳一郎 公立千歳科学技術大学, 理工学部, 准教授 (70606756)
三浦 政司 鳥取大学, 地域価値創造研究教育機構, 准教授 (80623537)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 菌種間競争 / 褐色腐朽菌 / 白色腐朽菌 / 炭素配分戦略 / 枯死木分解 / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、培養系における菌類の菌糸体の炭素配分戦略を測定する実験を行った。液体培地に、白色腐朽菌と褐色腐朽菌の菌糸を接種し、25度と30度の条件で培養し、培養後の菌糸体量、呼吸量および培地中に生産された有機酸の量を測定した。その結果、褐色腐朽菌であるマツオウジは、高温条件下でも有機酸を生産でき、むしろ生産量が増加したのに対し、白色腐朽菌であるシハイタケは高温条件下では有機酸の生産量が顕著に減少した。また、25度では両種の競争力は拮抗していたが、30度ではマツオウジの競争力がシハイタケよりも強かった。以上の結果から、褐色腐朽菌マツオウジは高温条件下でも物質生産を活発に行うことができ、これが高温条件下での本種の競争力の強さと関係している可能性が示唆された。 また、同時並行してマルチエージェントシミュレーションによる菌種間競争モデルの開発も行い、プロトタイプを完成させることができた。以上の成果を、2021年3月の日本生態学会大会において企画した自由集会において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
液体培養系において、温度を変えて白色腐朽菌と褐色腐朽菌を戦わせる対峙培養試験を行い、物質生産量の違いを明瞭に示すことができた。また、菌種間競争と有機物分解を説明するためのシミュレーションモデルのプロトタイプを完成させることができた。ただ、予定していた生産物質の網羅的測定が、機器の故障のためできていない。また、菌体における遺伝子発現解析もできていない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、培養実験で得られた菌糸成長や物質生産に関わる多数の変数を、シミュレーションモデルに反映させることでモデルの微調整を行うとともに、2種の競争関係だけでなく、多種が同時に競争する場合も含めモデルを拡張させる。また、出来上がったモデルを使い、様々な条件下における菌種間競争の結果、およびそれが材分解に与える影響を予測する。以上の結果をまとめ、学会発表ならびに学術誌への論文の発表を行う。
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Causes of Carryover |
機器の故障により、予定していた物質分析の位置ができなかった。また、COVID19の影響で研究打ち合わせが十分に行えず、培養菌体の遺伝子発現解析が行えなかった。物質分析に関しては、すでにサンプルは保存して確保してあるので、機器が治り次第速やかに実施する。遺伝子発現解析については、分析用の培養を本年度前半にスタートさせ、10月までにはDNA抽出サンプルを揃え、今年度中にシーケンスを実施する。
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