2023 Fiscal Year Annual Research Report
Genome evolution and diversification of obligate symbiotic bacteria in insects: tracking survey of field populations
Project/Area Number |
19K22458
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
細川 貴弘 九州大学, 理学研究院, 准教授 (80722206)
|
Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2024-03-31
|
Keywords | 共生細菌の種内多型 / 共生細菌の置換 / ゲノム比較 / ゲノム縮小 |
Outline of Annual Research Achievements |
生存に共生微生物が必須である昆虫は多い。昆虫類における必須共生微生物のユニークな点は宿主のメス親から子へ伝えられる垂直伝播が広く一般的に見られることである。垂直伝播ではメス親が持つ共生微生物のごく一部だけが子に伝えられるので、共生微生物集団に強いボトルネック効果が繰り返しはたらき、これによって共生微生物のゲノムでは弱有害突然変異の蓄積とサイズの縮小が促進されると考えられている。一方、垂直伝播によって維持されている共生微生物がまったく別の微生物にすり替わる「置換」の報告も少なくない。これらの二つは共生微生物におけるゲノム進化と多様化の主要メカニズムと考えられているが、これまでの知見は分子進化解析・ゲノム解析・分子系統解析からの推測であり、野外集団の追跡調査による直接的な証拠はなかった。本研究の目的は、共生微生物における弱有害突然変異の蓄積・ゲノム縮小・置換を野外集団の追跡調査によって実証することである。2022年度まではチャバネアオカメムシの共生細菌頻度が10年前調査時のものと比較してどのように変化したかを中心に研究を進めていたが、2023年度はミヤコキンカメムシの共生細菌を詳細に調査した結果、これまでDタイプと呼んでいた共生細菌がさらに二つのタイプに分けることができることを発見した。興味深いことにこのうちの一つは他の種のカメムシには見られないミヤコキンカメムシ特異的なDタイプ共生細菌であることがあきらかにになった。この二つのDタイプ共生細菌は非常に近縁であるためゲノムが比較しやすく、昆虫と共生を続けることによってどのようなゲノム変化が生じたかを明らかにすることができる。Nanoporeシーケンサーによって複数共生細菌株のゲノムシーケンスをおこなったところ、共生の歴史が長いDタイプ共生細菌はゲノムサイズが縮小している傾向が見られた。
|