2019 Fiscal Year Research-status Report
ミクログリア-ニューロン直接分化転換機構の解明と新規脊髄損傷治療法開発の試み
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19K22473
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中島 欽一 九州大学, 医学研究院, 教授 (80302892)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | ダイレクトリプログラミング / 脊髄損傷 / ミクログリア / ニューロン |
Outline of Annual Research Achievements |
転写因子遺伝子を終末分化した体細胞に導入することで、意図した細胞を直接的に誘導する直接分化転換法が開発されている。この技術は、iPS細胞作製を介する場合と比較して、短期間で腫瘍化の危険性も低く目的の細胞を得ることができ、当該研究及び医療応用の迅速化に貢献でき、また、生体組織内に存在する自己細胞を直接的に目的の細胞へと分化誘導できるという利点がある。そのため、必要とされる細胞種を治療が必要な時期に患者へと供給できる可能性が高い。例えば、脊髄損傷後、損傷部位に存在する本来はニューロン様活動を行わない細胞をニューロンへと分化転換することができれば、失った神経回路網の修復および機能回復が見込める。しかし、生体内損傷部に存在するどのような細胞をニューロンへと直接転換させるのがより有益であるか、あるいはメカニズムの詳細が不明なことなど未解決の問題もあり、直接転換法による神経疾患治療法は確立されていない。そのような状況の中、申請者らは、はこれまでの脊髄損傷研究(J Clin Invest 2010、Stem Cells 2012, 2018)から、ミクログリアの損傷部への集積を観察しており、この細胞は死細胞を貪食した後は不要であるばかりか炎症性サイトカインなどを放出して損傷部拡大を誘発することから、ミクログリアをニューロンへの分化転換標的と定め、メカニズムの解明と新規脊髄損傷治療法開発を行うこととした。まず、初代培養マクログリアに転写因子NeuroD1を発現させ、RNA-seq、ChIP-Seq、標的遺伝子の過剰発現あるいは発現減弱などにより、NeuroD1によるミクログリアからニューロンへの直接分化転換のメカニズムを明らかにした。さらに、マウス脊髄のミクログリア特異的にNeuroD1を発現させることで、脊髄内でニューロンへの分化転換を誘導できることも分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおよそのメカニズムの解明も終了し、脊髄内でのミクログリアからニューロンへの直接分化転換も確認することができたため、おおむね順調と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、損傷脊髄へのNeuroD1の発現によっても、ミクログリアからニューロンへの分化転換が見られるのか、また機能回復が見られるのかなどを検討することにより、脊髄損傷の新規治療法開発を展開する。
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Causes of Carryover |
メカニズムの解明も終わり、次年度にマウス購入・維持に関する費用と、それらマウスの解析に関与する試薬などの購入費に割り振りたいと思ったため。
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Research Products
(3 results)