2019 Fiscal Year Research-status Report
神経路特異的薬理学とインビボ神経活動イメージングを駆使した脳身連関の神経機構解明
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19K22477
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
南 雅文 北海道大学, 薬学研究院, 教授 (20243040)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 脳身連関 / 情動 / 循環器系 / 消化器系 / 分界条床核 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らの研究により、分界条床核が不安や抑うつなどの負情動生成に関与していること、さらに、分界条床核内ノルアドレナリン神経情報伝達亢進により胃排出能低下や下部消化管活動亢進が惹起されることが明らかとなっている。また、分界条床核内神経活動亢進が心拍数上昇などを引き起こすことも報告されている。そこで本研究では、分界条床核を起点とした神経回路に焦点を絞り、消化管運動中枢および心臓血管運動中枢が存在する延髄への神経情報伝達機構を明らかにする。さらに、それらの神経回路と種々のストレス反応への関与が報告されている内側前頭前野との機能的連関についても解析を行う。2019年度は、分界条床核から延髄までの神経情報伝達の中継点を明らかにすることを目的とし、視床下部に着目して研究を進めた。改変型GPCR(hM4Di)とその特異的リガンドであるClozapine-N-oxide(CNO)を用いたDREADD法を利用した神経路特異的な神経活動操作法により、分界条床核から外側視床下部に投射する神経を選択的に抑制し行動学的な変化を検討した。分界条床核から外側視床下部に投射する神経を両側性に抑制したところ不安様行動を亢進させた。また、不安様行動が亢進する慢性疼痛モデル動物において、分界条床核から外側視床下部に投射する神経が恒常的に抑制されていることも明らかにした。さらに、分界条床核から外側視床下部に投射する神経を抑制的に調節すると考えられる分界条床核2型神経細胞に対して、通常は抑制性に作用するニューロペプチドY(NPY)が、慢性疼痛モデル動物では興奮性に働くことも明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分界条床核から延髄までの神経情報伝達の中継点を明らかにすることを目的とし、視床下部に着目して研究を進め、分界条床核から外側視床下部に投射する神経の選択的抑制が不安様行動を亢進させることを明らかにし、外側視床下部が分界条床核から下位脳幹への情報伝達の中継点になっている可能性を示すなど、一定の研究成果を得ていることから、研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の研究により、外側視床下部が分界条床核から下位脳幹への情報伝達の中継点になっている可能性が示された。今後は、分界条床核から外側視床下部に投射する神経の選択的抑制が心臓および消化管の活動に及ぼす影響を検討するとともに、順行性および逆行性の神経トレーサーにより、外側視床下部から消化管運動中枢および心臓血管運動中枢が存在する延髄への神経投射の有無を検討する。さらに、精神的ストレス負荷などにより分界条床核を中心とした神経回路活動がどのように変化するかをインビボ神経活動イメージングにより解析する。
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Causes of Carryover |
2019年度には、化学遺伝学を用いた神経機能解析により、脳身連関に関与する神経路の解析を中心に研究を進め、より研究経費が必要なインビボ神経活動イメージングは、関与する神経回路を明らかにした後に2020年度に行うこととしたため。2020年度は引き続き化学遺伝学あるいは光遺伝学を用いた神経機能解析に加え、精神的ストレス負荷などにより分界条床核を中心とした神経回路活動がどのように変化するかをインビボ神経活動イメージングにより解析する。
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