2020 Fiscal Year Annual Research Report
内因性代謝物の血中濃度恒常性を制御する肝臓機能を記述する数理モデルの構築
Project/Area Number |
19K22487
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 洋史 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (80206523)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 代謝ネットワーク / 小分子代謝 / 生活習慣病 / 大規模モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
生命維持に不可欠な生体高次機能の一つである小分子代謝の血中濃度恒常性維持システムは、生活習慣病等の代謝システムが総合的に破綻傾向となる疾患の理解や治療法探索に重要と考えられる。小分子代謝の血中濃度維持機構の理解には、数理モデル・シミュレーション手法が有効であるため、本研究では、小分子の体内動態制御について、臓器レベルで代謝レベルの応答性を記述できる数理モデルの構築を目指した。小分子代謝が関連する疾患として代表的な2型糖尿病の病態解析に適応性を担保するため、2型糖尿病と関連性の高いと考えられる肝臓、脂肪組織、筋肉の3臓器内の小分子が、血流を解して物質交換されることを考慮した3臓器連結の網羅的なゲノムワイド小分子代謝ネットワークを構築した。ネットワーク内の血中濃度維持機構の理解には、代謝反応を速度論に基づき記述する手法が想定されるが、構築されたネットワークが大規模であり、実験的に測定可能な代謝流束を反映させた場合であっても、全反応を速度論的に記述するモデル構築は困難と考えられた。そのため、代謝流束の絶対値を推定する解析ではなく、入手可能なデータから、生体の状態変動に伴って変動する代謝経路を網羅的に探索する手法の構築を目指すこととし、健康状態あるいは2型棟療病患者の各臓器由来の網羅的な遺伝子発現データを入力することで、代謝流束が変動している部分経路を探索する解析手法を構築した。構築した手法による解析からは、遺伝子発現データの単純な比較では検出が困難な代謝経路の変動が検出された。この結果を検証するために、インスリン抵抗性状態を模した細胞を用いたin vitro実験を行った結果、インスリン抵抗性獲得に伴う該当代謝経路の変動を示唆するデータが得られた。このように、本研究では、病態進行に伴って網羅的代謝ネットワークが変動する様子を、代謝経路変動として理解する解析手法の構築に成功した。
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