2019 Fiscal Year Research-status Report
Design of anti-freezing molecules based on fluoro-sulfur functionalized terphenyl and bicyclo(1.1.1)pentane skeletons
Project/Area Number |
19K22491
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
柴田 哲男 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40293302)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | ヘリックス / テルフェニル / 不凍活性 / 糖 / ビアリール化 / テトラフルオロスルファニル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,外部環境に依存することなく,分子の立体障害のみでヘリックスを形成するテルフェニルを母骨格として,水溶性の糖分子を組み込んだ化合物を創製し,小分子から中分子程度の有機物質で不凍タンパク質の不凍活性を実現させることを目的とする。初年度は,テルフェニルの合成法の確立することを目指し,ベンゼン環を持つ3つのシントンから合成することとした。研究計画に従い,市販の化合物を出発物質として,2,6位に側鎖を持つブロモベンゼン,4-ヒドロキシ-3,5ジメチル-ベンゼンボロン酸ピナコール,3,5位に側鎖を持つフェニルボロン酸ピナコールをそれぞれ数工程で合成することに成功した。続いて,鈴木―宮浦クロスカップリングを用いて,ビアリール化反応を行ったところ,収率よくビアリール体が得られた。水酸基をトリフレート化した後,鈴木―宮浦クロスカップリングを用いたビアリール化によるテルフェニル骨格の構築を検討した。反応条件を精査した結果,収率50%で目的のテルフェニル体を合成することに成功した。興味深いことに,合成した一連の化合物の不凍活性を測定した結果、糖部位を装着していないにもかかわらず,過去に合成した不凍活性物質に近い活性を示すものを見いだした。 また、次年度に用いるテトラフルオロスルファニル(SF4)を連結したテルフェニルを合成するため,アリール-SF4-アリールの合成法の開発に取り組んだ。まず付加反応を確立させるため,ピリジンテトラフルオロスルファニルクロリドとアルキンの光-カップリング反応を検討した結果,青色LEDを使用し,CPME溶媒中または無溶媒で,付加体を高収率で得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基本となるテルフェニル骨格の合成方法を確立した。さらに一連の化合物のうちで不凍活性を示すものを見いだした。また、次年度に用いる原料となるアリール-テトラフルオロスルファニル-アルキンの合成法を確立できている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従い,初年度に確立したテルフェニルの合成法を用い,側鎖の長さの異なるテルフェニル糖を合成する。合成した化合物の不凍作用は,氷結晶成長阻害作用を測定することで評価する。また,テルフェニルがヘリックス構造を形成しているかどうかについては,円二色性スペクトルを測定することで評価する。 また,テトラフルオロスルファニル構造を持つテルフェニル糖の開発を行う。ペプチドヘリックスと同等のらせん長になるように,ビアリール構造にテトラフルオロスルファニル構造を組み込んだものを合成標的とするが,合成の難易度からテトラフルオロスルファニルアルキン構造を組み込んだテルフェニル糖の合成も併せて行う。 また,脂溶性や水素結合を制御するため,ベンゼン環にフッ素官能基を導入したテルフェニルの合成も計画する。
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Causes of Carryover |
テルフェニルの合成法についての問題が生じ,当該合成に詳しいSantos Fustero 教授(バレンシア大学・スペイン)と国際共同研究へと向けた協議を重ねていた。2020年1月から3月にかけてスペインに渡る予定をしていたが、コロナウイルスの可能性が浮上し、予定が立たなくなって、研究が一時的に中断した。研究計画で当初予定していた旅費や消耗品の支払いが削減した。そのため,当初予定していた一部の研究費の使用を繰り越さざるを得ない状況となった。現時点ではコロナウイルスの収束は見込めないため、電子メールやweb会議で先方から助言を得て、基本的に国内のみで研究を実施する。そのため昨年繰り越した経費のほとんどは消耗品,その他(機器使用料)に割り当てる。コロナウイルスが収束する場合には、旅費にも計上するなど柔軟に対応する。
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