2019 Fiscal Year Research-status Report
Peptide-Synthesis Using Super-Enzymatic Catalysis
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19K22492
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹本 佳司 京都大学, 薬学研究科, 教授 (20227060)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 合成化学 / ペプチド / 触媒 / ボロン酸 / 触媒作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
アリールボロン酸の触媒活性を飛躍的に向上させるために、今期は触媒構造にカルボン酸を導入することで、従来の触媒設計には無い「二量体ボロン酸触媒構造」を形成できるかどうか、またその二量体形成により加速効果が得られるのかを検証した。そこで、活性中心であるホウ素原子に配位させるカルボン酸の数と位置による触媒活性の変化を確認するために、以下の2つの戦略を検討した。 (戦略1)アリールボロン酸とアリールカルボン酸をアルキンで連結した種々の触媒を合成後、それぞれ2量体錯体を発生させ、アミド化を検討した。令和1年度には、ボロン酸とカルボン酸を異なる芳香環上に有するジアリールアルキン触媒の合成法を検討した。2-エチニルフェニルボロン酸とカルボキシ基を有する2-ヨードベンゼンを別途合成し、薗頭カップリング反応と保護基の脱離により、安息香酸型触媒と一炭素増炭し嵩高さの異なるCH2CO2HやCMe2CO2Hをオルト位に有する触媒3種の合成に成功した。さらに、カルボキシ基に代わりにリン酸やアミノ基やチオ尿素を有する触媒も同様の手法により調製することができた。また合成した触媒を脱水剤存在下に混合すると、触媒2分子から成るボロン酸とカルボン酸の2対2錯体がスムーズに形成されることも明らかにした。残念ながら、いずれの触媒も既存のボロン酸を凌駕するほどの高いアミド形成触媒活性を示すものは無かった。 (戦略2)上記の戦略1で合成した同種二量体錯体は分子内カルボキシ基の配位が強固なためか基質のカルボン酸との配位子交換が遅く、触媒活性が低い可能性があった。そこでカルボキシ基を持たない異種の触媒との組合せを検討し、触媒活性が向上するかどうかを試みたが、既存の触媒を超えるアミド化形成触媒は無かった。しかし、この2量体構造に基づいて、gem-ジボロン酸触媒を見出したので、来期にはそちらの研究を精力的に行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)当初の予定通りに、アリールボロン酸とアリールカルボン酸(安息香酸あるいはフェニル酢酸)をアルキンで連結した触媒の合成法を確立し、カルボン酸誘導体3種とそれ以外にもリン酸、チオ尿素、アミンなどの官能基を有する誘導体の合成を実施した。 (2)合成した触媒の中で、唯一カルボキシ基を有する触媒は脱水剤共存下で二量体を形成し、カルボン酸とボロン酸からなるWhiting型の2対2ボロン酸エステル錯体が定量的に得られることをNMR等のスペクトル解析により明らかにした。 (3)同種と異種のアルキンボロン酸を1対1で混合した2量体錯体のアミド形成能を探索したが、いずれも既存の触媒を凌駕する新規触媒を見出すには至らなかった。しかし、得られた錯体構造情報をもとにして、次の触媒設計に生かせる有益な知見を得ることができたので、来期の研究計画でこの点を明らかにする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に得た研究成果を加味し、令和2年度は、ボロン酸とカルボン酸を同一分子内に有する触媒ではなく、同一分子内にボロン酸を二つ有するビスボロン酸触媒を合成し、その触媒活性を探索する。ビスボロン酸として、同一炭素上に2つのボロン酸が置換したgem-ビスボロン酸誘導体とベンゼン環の1,2-位あるいはビフェニルの1,1’-位に2つのボロン酸が置換した芳香族ビスボロン酸の2種類を想定している。その錯体の配位場から外れたカルボン酸が酸・塩基触媒として協奏的に作用し(カルボン酸3分子が関わるプロトンシャトル)、錯体からアミドと水の脱離を加速している可能性を検証するため、触媒内に導入した官能基の特徴を最大限に活用できるように酵素に匹敵する多点認識触媒作用を持つ高機能触媒を設計し、温和な条件下かつ原子効率に優れた革新的なアミド化反応を実現する。
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Causes of Carryover |
新規触媒の合成ルートを確立するのに少々時間がかかってしまったために、当初予定していた数の触媒が合成できず、またそれに関連して反応の条件検討ができなかったため。
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