2019 Fiscal Year Research-status Report
Structural basis for discrimination between multi-drug exporters and lipid floppies
Project/Area Number |
19K22495
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加藤 博章 京都大学, 薬学研究科, 教授 (90204487)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 構造生物学 / 多剤耐性 / トランスポーター / 膜タンパク質 / X結晶学 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体膜を貫通しているトランスポーターには、基質を脂質二重層の内層から外層へ移動させるフロッパーゼ活性と、基質を細胞外へ直接排出するエクスポーター活性が知られている。これらはいずれもATPをエネルギー源として働いており、立体構造もよく似ている。そのため、両者は、はたして同じ分子メカニズムを異なる実験から命名したものなのか、本質的に別の分子なのか、不明の状態が今日まで続いている。そこで、エクスポーターをフロッパーゼ型へと改変し、その構造と機能を調べることにより、2つの膜タンパク質が異なる構造に基づく別の作用メカニズムで作用することの実証を目指した。 エクスポーターCmABCB1とフロッパーゼMsbAの結晶構造を比較したところ、膜貫通アルファヘリックス1番と3番(TM1とTM3)の相互作用に構造変化を誘引するアミノ酸残基の違いを見出した。その違いは、エクスポーター同士とフロッパーゼ同士では保存されていることから、エクスポーターとフロッパーゼ、それぞれに固有の立体構造モチーフであることが推測された。 そこで、エクスポーターの当該部位をフロッパーゼのモチーフのアミノ酸残基と置換したところ、ATP加水分解酵素活性の特徴が、エクスポーター型からフロッパーゼ型へ変化することを見出した。すなわち、輸送基質非存在下でも気質による活性化が最大になった時と同様の比活性を示した。また、その変異体は、薬物排出活性が大きく低下していることも見出された。これらの結果は、立体構造比較からの予想を支持している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ABCトランスポータースーパーファミリータンパク質は、生体膜を貫通する膜タンパク質として、主要な分子群であり、様々な生命維持に直接関わっている。名前の由来となっているABCは、ATP結合と分解により動力を供給するエンジンとして働くタンパク質領域であり、その部位のアミノ酸配列の特徴に応じて、A, B, C, D, E, F, Gサブファミリーへとさらに分類されている。ところが、同じBサブファミリーに分類されている分子でも、エクスポーターとフロッパーゼのように、その機能は異なっている。しかし一方で、そもそもエクスポーターとフロッパーゼに違いはなく、エクスポーターも基質を生体膜二重層の内葉側から外葉側へ移動させているだけだとの説を支持する研究者も多い。 今回の研究成果によって、エクスポーターとフロッパーゼには立体構造上に大きな違いがあり、部位特異的変異導入実験の結果、そのアミノ酸残基の違いが分子機能と直接関係する可能性が得られたことは今後のABCトランスポーター機能研究に大きな前進をもたらすことから、科学的な意義が高いと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
エクスポーター型からフロッパーゼ型へと改変した変異体タンパク質の結晶構造解析を実施し、変異体の立体構造がフロッパーゼに似ていることを明らかにする計画である。また、これまでの研究は、主にエクスポーター型の分子構造ををフロッパーゼ型に改変する場合を調べてきた。今後は、その反対のフロッパーゼ型からエクスポーター型への構造改変による影響を調べることにより、構造と機能の関係をより詳細に明らかにしたいと考えている。
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Causes of Carryover |
令和2年3月にドイツの研究協力者と現地ハイデルベルクにて実験を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を考慮し中止することになった。本研究遂行上、立体構造解析のためには当該協力者のもとで実験を行うことは不可欠なため、終息を見込み令和2年9月に延期して実施することとなった。なお、終息しない場合は他の実験手法を用いて代替するための準備を開始しており、非常事態の状況が改善され次第、代替実験の予備検討を早期に始める計画である。
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