2019 Fiscal Year Research-status Report
蛋白質の立体構造にタイムスタンプを付し構造遷移過程を解明する手法開発
Project/Area Number |
19K22510
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
清水 啓史 福井大学, 学術研究院医学系部門, 講師 (50324158)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安永 卓生 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (60251394)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 1分子計測 / 蛋白質 / X線回折 / 単粒子構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、X線1分子動態計測法と電子線単粒子解析法を組み合わせ、遷移過程における蛋白質の立体構造に時刻の情報を付加し、構造変化過程の全体像を明らかにする手法開発を目指して研究を遂行する。動的構造変化を起こす例として、pH依存性チャネル(KcsA)を用いて中性(閉状態)、酸性(開閉遷移状態)条件下で単粒子構造解析を行う。1分子動態観測については、観測中に中性から酸性へ溶液条件を変化させた際の1分子動態を計測する。単粒子構造解析で、X線結晶構造解析で得られていない、開閉構造変化の遷移過程の立体構造を捉え、時系列データが付加されている動画として得られるX線1分子動態計測データと比較して複数遷移状態の立体構造に時刻を付与する手法開発を行う。 この研究の目的を達するため、R1年度は電子線単粒子構造解析で中性条件・酸性条件で試料を作成する条件を検討し、予備構造の決定を試みた。また、X線1分子動態計測では構造変化の遷移過程を明らかにすべく、中性条件、酸性条件、阻害剤の存在条件でのX線1分子動態計測を行った。 その結果、単粒子構造解析について、よい画質を与える試料作製条件を決定すると共に、立体構造の初期構造を得て2019年の生物物理学会にて発表した。また、動態計測データを集積した。試料調整法を検討することにより、データ収集効率の向上を図った。次年度へ向けて立体構造データの分解能の向上を図ると共に、動態計測データとの比較検討することにより、構造遷移課程の全体像を明らかにすることを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、X線1分子動態計測法と電子線単粒子解析法(クライオ電子顕微鏡による単粒子解析法)を融合することによって、蛋白質の立体構造に時刻の情報を付加し、構造変化過程の全体像を明らかにする手法の開発を目指している。X線1分子動態計測法は金ナノ結晶を観測プローブとして用いる。サブミリ秒の高い時間分解能をもち立体構造変化の遷移過程を連続的に動画計測することができる手法であるが、立体構造情報を直接得ることはできない。電子線単粒子解析法は蛋白質結晶を用いずに蛋白質の立体構造を明らかにすることができ、生理的な溶液条件で試料中に複数の立体構 造が混在していても分類して別々に立体構造を明らかにすることができる手法である。しかし、同一条件で複数の立体構造が得られた場合、その時系列を明らかにすることはできない。2種の手法の利点を組み合わせて用いることで、蛋白質の立体構造の遷移過程の全体像を明らかにする手法開発を行う。 X線1分子動態計測については、酸性・中性・阻害剤の存在下でのデータ計測を行い、構造変化の遷移過程についてのデータを蓄積・解析しており、順調にデータ量・質共に向上している。また、電子線単粒子解析においても異なる条件下での立体構造解析を進め、初期構造を得て学会発表を行った。これらのことから、研究は順調に進展していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、X線1分子動態計測法と電子線単粒子解析法(クライオ電子顕微鏡による単粒子解析法)を融合することによって立体構造変化の遷移過程を明らかにする、新たな手法開発を目指している。遷移明らかにするため、X線1分子動態計測法を用いた観測ではデータの質と量が重要であり、電子線単粒子解析法においては、初期データを与える粒子数を増やすことによる、解像度の向上が重要である。今後は、X線1分子動態計測データ数を増やすと共に、データ解析ソフトウェアの処理能力の向上を図り、動態計測データの質・量を高める。また、電子線単粒子解析についても条件ごとのデータ量の向上を図り、解像度を向上させることで、動態計測との融合を図りたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響によって予定していた出張がキャンセルになったため、次年度使用額が生じた。次年度予算と合算して、観測データ解析効率向上のためのデータ解析ソフトウェア改良に使用する予定である。
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Research Products
(9 results)