2019 Fiscal Year Research-status Report
in vivo実験的進化系を利用した細菌の病原性システムの解明
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19K22523
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
垣内 力 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (60420238)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 実験的進化 / LPS / 外膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、病原性細菌と非病原性細菌の2つの細菌グループ間の違いを生み出す分子群を構成的に理解することである。地球上においては、多細胞生物の出現以降に、環境細菌が多細胞生物の体内環境に様々な遺伝子群の機能を適応進化させ、常在細菌や病原性細菌に進化したと考えられる。本研究では、カイコ感染モデルを活用して、非病原性細菌が自身の遺伝子に変異を蓄積させ、宿主免疫系から排除されない状態や宿主免疫系を凌駕する状態を構築して行く過程を実験的に捉える。本年度の研究においては、非病原性の大腸菌実験室株をカイコに繰り返し感染させることにより、ゲノムの変化に伴って細菌の病原性が上昇して行く過程を捉えた。全ゲノム配列を決定した結果、病原性上昇の原因の一つとしてLPSトランスポーターのアミノ酸置換変異を同定した。LPSトランスポーターは内膜で合成されたLPSを外膜へ輸送する輸送体であり、大腸菌の増殖に必須である。本研究で分離されたLPSトランスポーター変異株の栄養培地中での増殖速度は親株と変わらなかった。LPSトランスポーター変異株は膜小胞と共に異物を菌体外に排出する能力を上昇させ、様々な抗生物質と宿主免疫系の抗菌ペプチドに対する耐性度を上昇していた。さらに病原性大腸菌において、LPSトランスポーターのアミノ酸置換変異が見出され、それらは抗生物質と抗菌ペプチドに対する大腸菌の耐性化を導いた。以上の知見は、in vivoモデルにおいて細菌の病原性機能を実験的に進化させた初めての知見であり、増殖必須因子であるLPSトランスポーターの変異が宿主免疫系の抗菌物質に対する大腸菌の耐性度を上昇させ、病原性を上昇させることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、変異原処理とカイコ感染実験を繰り返すことにより、カイコに対する病原性が増加した大腸菌変異株を得ることに成功している。さらに、病原性上昇の原因となる遺伝子変異の一部を同定することに成功している。 以上の研究進捗状況から、本研究計画がおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
細菌の病原性上昇を導く遺伝子変異について、同定と機能解析を進める予定である。具体的には以下を予定している。 (1) 高病原性化した大腸菌の全ゲノム解析による遺伝子変異の同定と遺伝学的解析 (2) 枯草菌を用いた実験的進化実験による病原性上昇変異株の探索
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Causes of Carryover |
全ゲノム解析に予定よりも時間を要することが判明したため、次年度使用となった。
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Research Products
(3 results)