2020 Fiscal Year Research-status Report
in vivo実験的進化系を利用した細菌の病原性システムの解明
Project/Area Number |
19K22523
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
垣内 力 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (60420238)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | ペリプラズム / グルカン / opgG / opgH / 大腸菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
LPSトランスポーター以外の大腸菌の高病原性化をもたらす遺伝子変異を同定する目的で、カイコ感染モデルを用いた大腸菌の実験的進化を行った。1回の変異原処理と感染実験により、16株の高病原性大腸菌変異株を得た。16株のうち6株には、病原性上昇をもたらすLPSトランスポーターのアミノ酸置換変異が存在した。LPSトランスポーターに変異を持たない10株の全ゲノム解析を行ったところ、これらの大腸菌変異株はすべて、opgG遺伝子またはopgH遺伝子に、終止コドン変異またはアミノ酸置換変異を有していた。opgG遺伝子とopgH遺伝子はオペロンを構成し、大腸菌のペリプラズム層のグルカンを合成する酵素をコードする。opgG遺伝子とopgH遺伝子の欠損がカイコに対する大腸菌の高病原性化を導くと考え、opgG欠損株とopgH欠損株のカイコに対する殺傷活性を検討した。その結果、opgG欠損株とopgH欠損株はいずれも親株に比べてカイコに対する殺傷活性が増大していることが明らかとなった。 opgG欠損株とopgH欠損株がカイコに対する殺傷活性を上昇する原因を知る目的で、カイコの免疫反応を担う抗菌ペプチドに対する感受性を検討した。その結果、opgG欠損株とopgH欠損株は、親株に比べて抗菌ペプチドに対する耐性を示すことが明らかとなった。さらに、他の抗菌物質に対する耐性度を検討したところ、opgG欠損株とopgH欠損株は抗生物質であるバンコマイシンとレボフロキサシンに対して耐性を示すことが明らかとなった。 以上の結果は、ペリプラズムグルカン合成酵素遺伝子opgGとopgHの欠損が大腸菌の抗菌物質に対する耐性化を導き、大腸菌の病原性を上昇させることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) 当初の計画通り、変異原処理とカイコ感染実験により、大腸菌の高病原性変異株を得ることに成功している。 (2) LPSトランスポーター以外の病原性上昇を導く遺伝子変異として、opgGHの遺伝子変異を同定することに成功している。 以上の研究進捗状況から、本研究計画がおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、細菌の病原性上昇を導く遺伝子変異の同定と機能解析を進める予定である。具体的には以下を予定している。 (1) 500倍に病原性が上昇した大腸菌変異株における病原性上昇を導く遺伝子変異の同定 (2) 大腸菌の網羅的遺伝子破壊株ライブラリーからの病原性上昇株の探索
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Causes of Carryover |
高病原性大腸菌変異株の全ゲノム解析結果に基づき、どの遺伝子変異がカイコに対する大腸菌の病原性を上昇させるかを解析する過程に時間がかかっている。それぞれの遺伝子変異株を作出するための遺伝子工学試薬、カイコ感染実験を行うためのカイコとカイコ飼料を購入するために助成金を使用する。
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Research Products
(4 results)