2019 Fiscal Year Research-status Report
腸内細菌叢を介したがん抑制遺伝子p53による消化管障害抑制機構の解明
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19K22525
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
谷川 千津 東京大学, 医科学研究所, 助教 (30422421)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | p53 / microbiome |
Outline of Annual Research Achievements |
p53はヒトがんの約半数で変異が生じる最も重要ながん抑制遺伝子である。p53ノックアウトマウスは放射線照射に対して重症の腸管症候群を示すことが知られているが、その機序はこれまで不明であった。我々は放射線照射前後のマウス糞便中のマイクロバイオーム解析の結果、p53が腸内細菌叢を制御することを発見した。本研究では、p53による腸内細菌叢制御に関わる標的遺伝子の探索、および腸内細菌の代謝産物解析を通じて、p53による消化管障害および消化器がん発症制御機構の解明を目指す。さらに標的遺伝子の多型と、消化器がんや炎症性消化管疾患の発症リスクとの関連も検討する。 昨年度は下記について実施し、成果を得た。 目的Ⅰ p53による消化管障害抑制メカニズムの解明: p53野生型およびノックアウトマウスを用いて、腸内細菌の主要代謝産物である短鎖脂肪酸の変化を検討した。腸内細菌叢の検討と同様、放射線照射の前後で排泄便を回収し、糞便中の短鎖脂肪酸の分析を行った。その結果、複数の短鎖脂肪酸においてp53有無による違いを認めた。 目的Ⅱ 腸内細菌叢を制御するp53標的遺伝子の同定: p53により発現が誘導される遺伝子のうち、Gene ontology解析により、腸内細菌の制御に関わる113遺伝子を抽出した。さらに、その誘導が小腸・大腸・肝臓組織に認められる遺伝子として、4つの急性期タンパク質が候補として絞られた。いずれもp53による直接の転写制御が証明された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた計画のほぼすべてに着手でき、また、成果が順調に得られつつあるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は下記について実施予定である。 目的Ⅰ p53による消化管障害抑制メカニズムの解明: さらに腸管免疫への影響を検討するため、IgAを測定する。腸内細菌叢の検討と同様、p53野生型およびノックアウトマウスを用いて、放射線照射の前後で排泄便を回収し、糞便中のIgAの分析を行う。 目的Ⅱ 腸内細菌叢を制御するp53標的遺伝子の同定: 候補タンパク質はいずれも分泌タンパク質のため、これらをマウスに腹腔内投与後に放射線照射を行い、消化管障害への影響を検討する。タンパク質は大腸菌を用いて精製、もしくは市販品を購入する。さらに、これら候補のヒト関連疾患への影響を検討する。候補遺伝子内の機能的な多型について、東京大学のバイオバンクジャパンに保管されている17万人の遺伝子型情報および臨床情報を利用し、これら多型の大腸直腸がん・炎症性腸疾患への関与を検討する。また上記疾患の患者血清を用いて、血中タンパク質量を測定し、疾患発症や予後との関連を検討する。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの影響により、マウスの繁殖を一時中断したため、一部実験予定を翌年度に延期した。再開後に予定通り計画を進める。
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Research Products
(9 results)