2019 Fiscal Year Research-status Report
Searching for immune checkpoint molecules regulated by an RNA-binding protein HuR
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19K22533
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
河合 太郎 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (50456935)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 腫瘍免疫 / RNA / サイトカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
がん細胞は免疫系で認識され排除される一方、免疫細胞の腫瘍内浸潤や活性化を抑制する免疫抑制機構を複数備えており免疫系からの攻撃を回避している。我々は、Hu antigen R (HuR; 別名ELAV1)と呼ばれるRNA結合タンパク質を欠損したマウス肺がん細胞(LLC)をマウスに移植すると、抗腫瘍免疫が誘導される知見を得た。HuRはmRNAの3′末端非翻訳領域に結合するタンパク質であり、mRNAの安定化に寄与する分子である。研究代表者の知見は、HuRにより発現が制御される遺伝子の中に、免疫抑制に関与する分子が含まれることを強く示唆するものである。そこで、本研究では、HuR欠損細胞で発現が減少している遺伝子群の中から免疫抑制に関わると予想される細胞表面分子やサイトカイン類を抽出し、それらを個々にノックアウトしたLLC細胞を樹立し、マウスへと移植することで、その後の腫瘍免疫誘導を検討する。腫瘍免疫活性化が認められた場合、該当分子に対する中和抗体の作成も視野に入れ、これが新たな免疫チェックポイント阻害剤として機能するか検討を行い、腫瘍に対する新たな治療アプローチへと繋げることを目指す。これまで、ケモカインCCL2やCXCL1、細胞外マトリックスの分解酵素MMP3やEFEMP1、細胞接着に関与するCDH2(カドヘリン)、サイトカインであるTGFβ1の発現がHuR欠損 LLC細胞で有意に低下していることを見出しており、これらを中心に腫瘍免疫への寄与について解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自ら樹立したHuRを欠損する肺がん細胞(LLC)細胞と野生型細胞間の遺伝子発現をマクロアレイにより網羅的解析を行った結果、単球の遊走に関与するケモカインであるCCL2やCXCL1、細胞外マトリックスの分解酵素であるMMP3やEFEMP1、細胞接着に関与するCDH2(カドヘリン)、サイトカインであるTGFβ1の発現がHuR KO LLCで有意に低下していた。また、qRT-PCRによる再現実験でも確かにこれら遺伝子の発現低下が確認された。今年度、これらの中でMMP3、CDH2を欠損する細胞株の樹立に成功した。さらにマウス皮下への移植実験から、MMP3欠損LLC細胞では腫瘍の成長が野生型と比べ有意に抑制されていた。さらに詳細に解析を行ったところ、野生型と比べMMP3欠損細胞を移植した腫瘍部位ではCD4陽性T細胞の有意な増加が認められ、またCD8陽性T細胞の増加傾向も認められた。以上のことから、MMP3がT細胞による腫瘍免疫に対し抑制的に働く可能性が示唆された。また、他の候補遺伝子についても欠損株の樹立を行っている段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、他の候補遺伝子についても欠損細胞の樹立を完成させ、それぞれマウスへの移植実験ならびに浸潤する免疫細胞分布解析を通して、抗腫瘍免疫への寄与を明らかにする。また、新たな候補因子の探索も同時に進め、それらについても欠損株の樹立を行う。MMP3に関しては今回の実験結果より腫瘍免疫抑制に寄与している可能性が示唆されたため、今後T細胞のみならず自然免疫細胞である樹状細胞やマクロファージの浸潤やサブセットの解析を行う。さらに、MMP3の阻害剤を用いて、腫瘍抑制効果ならびにT細胞浸潤促進効果があるかマウス個体レベルで解析を行い、チェックポイント阻害剤として機能しうるか検討を行う。一方、HuRそのものに対する阻害が抗腫瘍免疫を高める可能性があることから、HuRの阻害剤も用いて同様の実験を行う。また、HuR阻害剤で処理した細胞においてもHuR欠損細胞と同様の遺伝子発現の変化が起こるかもRNA-Seq等を用いて網羅的に解析を行う。
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Research Products
(10 results)