2019 Fiscal Year Research-status Report
偏性細胞内寄生菌(リケッチア)における接合伝達系の解析と遺伝子操作技術への応用
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19K22536
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
林 哲也 九州大学, 医学研究院, 教授 (10173014)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | リケッチア / 接合伝達 / ゲノム解析 / トランスポゾン / 遺伝解析系 / 必須遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
リケッチアの解析は、取扱いの煩雑さや遺伝解析系開発の難しさ等のために大きく遅れている。本研究では、日本紅斑熱リケッチア及び極東紅斑熱リケッチアの近縁種で非病原性のLon sp.に存在する接合伝達遺伝子群をコードするプラスミド(pLON)の発見に基づいて、偏性細胞内寄生菌でのプラスミド接合伝達系の存在の証明、pLON接合伝達能を活かした効率の良いランダムトランスポゾン挿入変異導入系の開発とこれを用いた日本紅斑熱リケッチアの細胞内増殖に必要な遺伝子の網羅的な同定に挑戦している。 本年度は、pLON上の遺伝子を精査し、改めてアノテーションを行い、接合伝達遺伝子群の確認と既知の接合伝達遺伝子群との比較を行った。また、並行して行っている日本紅斑熱リケッチア及び極東紅斑熱とLon sp.との比較ゲノム解析から、染色体上にもpLON上のものとは異なる接合伝達関連遺伝子群が存在することが明らかになったため、この遺伝子群についても精査を行った。pLONと染色体上の接合伝達関連遺伝子群の解析結果を含む日本紅斑熱リケッチアとLon sp.との比較ゲノム解析の結果は論文準備中であり、これに関連する日本紅斑熱リケッチアと極東紅斑熱リケッチアの比較ゲノム解析の結果については論文発表を行った。また、接合伝達系の機能解析と変異導入系の開発に向けてP3実験室の整備を行い、学内承認を得た。そのうえで、Lon sp.の長期継代を開始し、Lon sp.の培養条件や増殖特性の確認し、pLONの安定性の確認と脱落株の取得を目指して培養と観察を行った。さらに、これらの作業と並行して遺伝子組換え実験の準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
P3実験室の学内承認に予想以上に時間がかかり、Lon sp.の培養開始が遅れた。また新型コロナ感染症の影響でLon sp.の長期培養の中断を余儀なくされたうえに、年度内に性能確認を行ったうえで購入予定であった高精度エレクトロポレーションシステムの導入を延期せざるをえなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナ感染症による実験中止期間の見通しが立たないため、まず、pLONと染色体上の接合伝達関連遺伝子群の解析結果を含む日本紅斑熱リケッチアとLon sp.との比較ゲノム解析の結果の論文作成に重点を置き、早期の論文発表を目指す。 また、実験中止が解除され次第、Lon sp.の長期継代を再開し、pLONの安定性の確認と自然脱落株の取得を目指ざす。同時に、導入予定であった高精度エレクトロポレーションシステムの性能確認を行い、早期導入を図るとともに、pLONをベースとした大腸菌-リケッチアシャトルベクター(接合伝達性があり、リケッチアでのみ転移が生じるトランスポゾンを搭載)を作成する。これらとLon sp.のpLON脱落株を用いて、リケッチアへのプラスミド導入系とランダムトランスポゾン挿入変異導入系を開発する。 プラスミド導入と挿入変異導入に関する効率の検証と各種条件の至適化を、Lon sp.での導入を行った後、Lon sp.と日本紅斑熱リケッチアにおいて、ランダムトランスポゾン挿入変異体を取得し、Tn-seqの手法を用いたゲノム解析から細胞内増殖に必要な遺伝子(変異が導入できない遺伝子)の網羅的な同定を試みる。
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Causes of Carryover |
P3実験室の学内承認に予想以上に時間がかかり、Lon sp.の培養開始が遅れた。また新型コロナ感染症の影響でLon sp.の長期培養の中断を余儀なくされたうえに、これらの培養家を用いて性能確認を行ったうえで年度内に購入する予定であった高精度エレクトロポレーションシステムの導入を延期せざるをえなくなったため。
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