2020 Fiscal Year Research-status Report
Signalosome formation and functions of the immune-checkpoint receptor TIGIT regulated by the height of its ectodomain.
Project/Area Number |
19K22545
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
横須賀 忠 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (10359599)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 免疫チェックポイント分子 / 副刺激受容体 / TIGIT / T細胞 / シグナル伝達分子 / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
受容体とリガンドとの結合では、Transの関係のみが注力される傾向にあるが、近年ではcisの結合も重要であり、複雑な生理機能を生むことが知られるようになった。岡崎らが発見したPD-1とCD80のcis結合は、免疫チェックポイント阻害療法に新たな解釈を投じている。これまで我々が研究の対象としてきた受容体のシグナロソームも、このcis結合がシグナル伝達の惹起と強弱を制御するための、cisの機能ユニットであり、本研究では、免疫受容体の高さが受容体の細胞表面の分布を決定し、免疫細胞の活性化を担うシグナル伝達の単位「シグナルソーム」を制御するという、構造の違いから生理活性が決定される新たな概念の創出を目的とした。この仮説を証明するための研究対象として、第3のチェックポイント分子TIGITとCD96、またその競合活性化分子DNAM-1の高さの違いに注目し、CD8陽性細胞傷害性T細胞(CTL)に発現しているこれらの分子がどのようにTCRからの活性化シグナルを制御しているか、分子の高さの違いから研究を遂行した。TIGIT、CD96、DNAM-1を可視化するため、超解像度顕微鏡と、リガンドであるCD155のGPIアンカーモチーフ型キメラ分子を導入した抗原提示可能な人工平面脂質二重膜との融合システムを構築し、1分子イメージングを行った。その結果、TIGIT、CD96、DNAM-1、TCRのそれぞれ受容体が、各々の分子の高さの違いによって多様なクラスター形成し示し、クラスター同士の分画や共局在など、挙動の違いが観察された。これらの結果は、分子の高さを調節することでTIGITを中心としてた複数の活性化及び抑制性受容体とそのリガンドが副刺激受容体ネットワークがより複雑な関係を持って機能していることを示唆している。この高さと受容体の局在を制御し、効率的にCTLの活性化を制御することで、より優れた癌免疫療法開発の基盤を構築することが目的である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
共焦点レーザー顕微鏡、超解像度全反射蛍光顕微鏡、およびCD155のGPIアンカーモチーフ型キメラ分子を導入した抗原提示人工平面脂質二重膜を用い、リガンドCD155の存在下でのみ、TIGITがクラスターを形成することを示した。また、TIGITの下流のシグナル伝達分子として、脱リン酸化酵素SHIP1がリクルートし、TIGIT-SHIP1による抑制性シグナロソームを形成していた。CD155との結合を介してTIGITと拮抗する活性化受容体DNAM-1も、CD155との結合を機に、DNAM-1マイクロクラスターを形成した。TIGITもDNAM-1もTCRとの共局在において同様の挙動を示しており、TIGITはTCRシグナルに対してクロストークしながら抑制的に働く、同様にDNAM-1は活性化に働く可能性が強く示唆された。一方、3つの受容体の中で最も背の高いCD96はTIGIT、DNAM-1、TCRとは異なり、シグナロソームを形成することはなく、T細胞と人工平面脂質二重膜殿接着面に集まるだけであった。故にTCRシグナルへの直接的なクロストークを行う可能性は低く、接着分子と類似した挙動を示した。CD96とDNAM-1との競合実験を行うと、CD96がCD155を奪取し、DNAM-1とCD155の結合が低下することによるT細胞応答の減弱が確認された。CD155との結合力が最も強力であるのは、既存の報告とは異なり、DNAM-1>CD96であったが、CD96のT細胞表面発現は高く、CD155の奪取には十分量存在することが分かった。また、CD96のエクトドメインを欠損さ、CD96の細胞外の高さを低くすると、TIGIT、DNAM-1、TCRとの共局在が起こり、受容体―リガンドの高さが分子のcisの結合を決定するという仮説が証明された。
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Strategy for Future Research Activity |
CD155をリガンドとして結合する受容体CD155、DNAM-1、TIGIT、CD96のエクトドメインの欠損体を作出し、T細胞とNK細胞株に発現させ、標的細胞との混合培養により産生されるサイトカイ産生および細胞障害活性によりそれぞれの分子のtransおよびcis結合による活性化制御機構を検討する。また、細胞内ドメインにリクルートしてくる責任分子を、TIGIT-SHIP1意外にも、DNAM-1-SLP-76、-GRB2、-フォスファチジルイノシトールなど下流シグナル伝達分子の検証を行う。それらの下流の活性化シグナル伝達分子の評価は、ウエスタンブロットによる免疫沈降やフローサイトメトリーによる細胞内リン酸化タンパク質の検出および、標的細胞から放出されるRLucの測定を介した細胞障害アッセイで行う。また、生体内でのDNAM-1、TIGIT、CD96各シグナロソームの腫瘍免疫における機能や次の免疫チェックポイント療法の可能性を検討するため、標的細胞としてRLucと卵白アルブミン(Ovalbumin:OVA)を遺伝子導入した胸腺腫細胞株EL-4を用い、またCTLとしてOVA特異的CD8+T細胞株OT91.0および同TCRトランスジェニック(OT-I Tg)を用いて、IVISを用いた体外腫瘍容量測定、OT-I細胞のマウス内での動態、in vitro機能アッセイ等を行う。また、OVA特異的反応系にて予想通りの結果が得られれば、既に腫瘍移植の条件検討が終わっている免疫不全マウスNOD-Prkdcscid-IL2Rγnull NSGにメラノーマ細胞株B16-F10を移植しin vivo評価を行う。さらに、近年、もう1つの免疫チェックポイント分子として注目されているBTLA-SHP1軸とのシグナル伝達機構や生体内でのCTL抑制機能の相違を検証するため、PD-1-SHP2、BTLA-SHP1、TIGIT-SHIP1の3つのシグナル軸によって異なる基質が標的となり、応答性の違いが理論的に区別可能か、抗原提示人工平面脂質二重膜を用いたイメージング、さらにはEL-4、B16-F10を用いたin vivo評価系で検討を加える。
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Causes of Carryover |
COVID-19パンデミックの影響により、国際共同研究先の米国ベイラー医科大学との試薬や細胞の作成が滞り、一部実験が停滞した。本年度に、米国より取得予定の試薬と細胞を用いて、超解像顕微鏡を用いた1分子研究を予定し、その実験計画のため繰越した研究費を使用する。
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