2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K22570
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
八尾 良司 公益財団法人がん研究会, がん研究所 細胞生物部, 部長 (80291095)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | PDOs / 大腸がん / 転移・再発 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん組織は、分化形質が異なる様々な細胞種から構成されている。細胞多様性は、転移や化学療法抵抗性などで中心的な生命現象であるにも関わらず、技術的・臨床的な制約によりヒトでの実証実験が困難であり、実臨床に応用可能なレベルの実態解明は進んでいない。本研究課題では、がん組織の細胞多様性について明らかにし、生物学的な実証と臨床病理学的な検証により、治療標的分子の探索や患者層別化など、新たな治療法開発を推進するための学術基盤を構築することを目的とする。 本研究では、がん研有明病院で手術が行われたstageIVの大腸がん患者の原発巣・転移巣の同時切除検体と、その後のフォローアップにより再手術の際に切除された再発巣から樹立されたpatient-derived organoids(PDOs)を解析対象とする。これらのPDOsをscRNA-seqにより解析を行い、データーを取得、情報学的手法によりバッチエフェクトを除去することにより、5つのクラスターからなる大腸がん組織の細胞クラスターモデルを作製した。各クラスターは、幹細胞性、増殖性、細胞分化を特徴とする細胞階層性があることが想定された。さらに、DEG解析により、幹細胞に特徴的な遺伝子群を同定することに成功した。シングルセル解析により作製されたモデルを検証するために、幹細胞マーカー遺伝子の一つに、IRES-EGFR-P2A-inducible Cas9カセットをゲノム編集により導入した。これらの遺伝子改変PDOsを用いて、がん組織を構成する細胞集団の多様性とその制御機構としての階層性の解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PDOsのscRNA-seqにより、生体内組織を反映すると考えられる細胞多様性を明らかにすることができ、さらに幹細胞マーカーの同定とモデルの実証実験のためのゲノム編集を行うことに成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題で取得された幹細胞マーカーにIRES-EGFP-P2A-inducible Caspase9カセットが導入された遺伝子改変PDOsを用いて、がん幹細胞の機能解析を進めるとともに、同一患者由来のPDOsの比較、解析を行うことにより、原発巣、転移巣、再発巣の細胞多様性に関する相違を明らかにする。
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Causes of Carryover |
シングルセル解析の技術的な進歩により、予定していた10xchromium社のscRNA-seqとは異なるプラットフォームが利用可能な状況となった。ただし、今年度内の解析完了には間に合わないため、予定を変更し、来年度以降に解析を行う必要があり、次年度使用額が生じた。この予算は、今年度予定していた解析を最新技術を用いて行うために使用する計画である。
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Research Products
(7 results)